摂食嚥下チーム

メンバー構成

摂食嚥下障害看護認定看護師、言語聴覚士、NST専門療法士、リハビリテーション栄養指導士、各部署リンクナース

入院患者で「入院すると体重が減った」、「入院するまでは口から食べられていたのに」という問題に直面することがあります。できるだけ口から食べ続けて元の生活に戻ることができるように退院後も生活の質を落とさないようにするためにできることはないかと考えています。

サルコペニアとオーラルフレイル

サルコペニアは身体的フレイルの一部であり進行性で全身性の骨格筋減少症と言われています。またサルコペニアは身体機能低下から日常生活動作(ADL)の低下や、さまざま合併症を発症し健康障害を引き起こします。急性期病院では入院後14.5%の患者にサルコペニアが発症しているという報告があります(Martone AM 2017)。

嚥下に関係する筋肉群も例外ではなく、サルコペニアになると同じように飲み込みに必要な筋肉量が減少することで誤嚥しやすくなってしまいます。オーラルフレイルはフレイルのひとつで飲み込む力だけでなく噛む力も衰えることで病状の悪化や食べる楽しみも奪ってしまう可能性があります。

フレイル予防として、口の中を清潔に保つことや、栄養管理とリハビリテーションを行い身体機能低下と筋肉量減少を防ぐことが必要となります。

摂食・嚥下とは

摂食・嚥下(えんげ)とは、食物が認知され、口に取りこみ胃に至るまでのすべての過程をいいます。摂食・嚥下障害とは、この過程において障害があることをいいます。

特に入院を必要とする高齢者は、入院前からの骨格筋減少を認めている事が多く、入院治療による身体機能低下から日常生活動作の低下や嚥下機能低下を引き起こしやすくなります。嚥下機能低下を起こすと、誤嚥(ごえん)を起こしやすくなります。誤嚥(ごえん)とは、食べものの一部あるいは全部が食道ではなく気管に流入することをさし、飲食物・分泌物・胃内容物の誤嚥により起こる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。

嚥下障害のある患者に、早期リハビリテーションと早期経口摂取、口腔ケアは重要と考えています。そのため24時間患者の生活に寄り添うことのできる看護師を摂食嚥下のスペシャリストとして育成することを目的に摂食嚥下チームを立ち上げました。

摂食嚥下チームの役割

NST委員会の下部組織として位置づけ2019年より活動しています。看護師による嚥下評価をもとに多職種連携をはかり、早期経口摂取を目指しスタッフの知識や技術獲得を目指しています。また質の高いケア実現にむけた教育・指導・相談業務に携わっています。

活動内容

摂食嚥下研修

安全な食事提供を目的として、医師・言語聴覚士・歯科衛生士による摂食嚥下に関する知識と評価技術を身につけてもらうための摂食嚥下評価者研修を開催しています。研修終了後、嚥下評価者研修修了者として嚥下評価やスタッフ教育に関わってもらっています。

院内から希望者を募り、年2回の研修を行っています。研修内容は、摂食嚥下に関わる座学で基本的知識を習得し、反復唾液嚥下テスト、改訂水飲みテスト、とろみのつけかた、フードテストについて学びました。これまで、院内へ約100名の修了者を輩出しています。修了後には摂食嚥下チームのシールを配布しており、嚥下評価者の目印としています。

また食事介助時のポジショニングに関する動画を作成しており、困ったときにはリンクナースを中心に現場で学べる環境を作っています。

嚥下ラウンド

嚥下障害がある患者に対して、NSTラウンドの時間を用いて患者のベッドサイドに赴き、嚥下評価・食事摂取状況・栄養評価を行い多職種でサポートしています。

入院時からの嚥下評価を行うシステム

緊急入院の患者に対して、できるだけ早い段階で嚥下評価を看護師で評価しています。その結果、嚥下障害の疑いがあれば言語聴覚士による評価を行っています。入院早期に看護師が嚥下評価を行うことで、より早期から経口摂取が開始できるように、また誤嚥のリスクを抽出できるようなシステムを構築しています。