基本的臨床能力評価試験
(2020年度)
← 前
ランダム
次 →
トップ
【問題1】30歳の男性。2日前からの持続的な腹痛を主訴に救急外来を受診した。腹痛の性状は徐々に出現し、鋭い激しい痛みであった。腹痛は咳嗽、くしゃみ、体位、前屈、および体幹を右方向に回旋させると痛みが誘発される。既往歴に特記事項なし。 腹部身体所見の動画を別に示す。
この所見から想定されるものはどれか。
(1) 急性虫垂炎
(2) 急性胆嚢炎
(3) 憩室炎
(4) 前皮神経絞扼症候群
(5) 尿管結石
判定
前皮神経絞扼症候群(abdominal cutaneous nerve entrapment syndrome: ACNES)は、Th9〜Th12の末梢神経が筋鞘を貫く部位(腹直筋の外縁付近)で絞扼されることが原因となる。30〜50歳に好発し、手術、肥満、ベルトや衣類の着用、妊娠などが誘引となる。高次機能病院の救急外来における有病率は約2%とされる。局所的な腹痛であることが特徴で、疼痛範囲はコイン大程度のみである。身体診察ではカーネット徴候が陽性となるのが特徴で、約80%の症例で圧痛部位に感覚障害を認める。治療と確定診断には局所麻酔が有用であり、単回の麻酔注入後に疼痛が完全に寛解することが多い。
【参考文献】
1)Watari T, Tokuda Y. Anterior cutaneous nerve entrapment syndrome. BMJ Case Rep 2019 Dec 2;12(12):e232765.
2) Suleiman S, Johnston DE. The Abdominal Wall: An Overlooked Source of Pain. Am Fam Physician 2001 Aug 1;64(3):431-8.