慢性骨髄性白血病

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概要

血液の主な成分である血液細胞(白血球、赤血球、血小板)は、骨の内部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞が増殖し、さまざまな細胞に成長(分化)することによってつくられます。慢性骨髄性白血病は、この造血幹細胞の遺伝子に異常が起こり、発症する病気です。9番染色体と22番染色体の一部がきれていれかわることで、フィラデルフィア染色体ができ、bcrabl融合遺伝子という異常な遺伝子がつくられます。このbcrabl融合遺伝子からつくられるタンパク質は、血液細胞を異常に増殖させる働きがあるため、分化・成熟した白血球が大量に増えてしまいます。新たに診断される人数は、1年間に100万人あたり約7~10人です

診断

血液検査で血液細胞の種類や数をみます。白血病や血小板が異常に増えているか、また白血球の一種の好中球系細胞成熟段階や、異常な白血球があるかどうかなどを調べます。さらに骨髄検査を行い、特徴的な染色体異常(フィラデルフィア染色体)あるいは遺伝子の異常(bcr-abl遺伝子)があるかどうかを調べます。また超音波やCT検査などの画像検査を行い、脾臓や肝臓が腫れていないかを調べます。

病期(進行度)と症状

慢性骨髄性白血病の病期はおもに3つに分けられます。病気が進むにつれて症状があらわれます。

1. 慢性期(約5-6年) 進行はゆっくりで、ほどんと症状はないために、健康診断やほかの病気の検査で、偶然に発見されることがあります。病気の進行につれて、体重減少や微熱、夜間の寝汗、脾臓のはれによる腹部の膨満感、不快感などが出ることがあります。
2. 移行期(約6-9か月) 進行が徐々に早くなってきます。進行につれて、発熱や貧血、脾臓の腫れがみられるようになります。
3. 急性転化期 進行ははやく、急性白血病のような病状の時期になります。細胞が増殖するだけでなく分化(成長)にも障害がおこり、未熟な血球(芽球)が増加するために、正常は血球が減少します。その結果、急性白血病と同様に、貧血、感染症、出血、あるいは発熱、骨痛などの症状がみられます。

治療

慢性骨髄性白血病については、移行期や急性転化期に進行してしまうと、治療が難しくなります。慢性期のうちに治療を開始し継続することで、病気の進行をおさえることが重要になります。慢性期の治療は、以前は強力な抗がん剤や放射線治療で、体内の白血病細胞を破壊したのちに、正常な造血幹細胞を移植して造血機能を回復させる治療が行われていました。現在の治療の中心となるのは分子標的薬:チロシンキナーゼ阻害剤で、フィラデルフィア染色体がつくりだす異常なタンパクをおさえることで、白血病細胞を減らす治療が行われます。

チロシンキナーゼ阻害剤には、第一世代のイマチニブ(グリベック)、第二世代のダサチニブ(スプリセル)、ニロチニブ(タシグナ)、ボスチニブ(ボシュリフ)、第三世代のポナチニブ(アイクルシブ)があります。それぞれの薬の副作用はことなりますので、このなかから、患者さまの年齢や合併症など考え、それぞれの患者さまに最適な薬剤を選択します。はじめに開発されたイマチニブの長期成績では、治療開始10年後でも90%近い方が、急性期に進行せずに病状が安定していると報告されています。良い治療効果をえるためには、確実に内服を続けることがとても重要だということがわかっています。

チロシンキナーゼ阻害剤を内服すると、皮膚の発疹やかゆみ、からだや顔のむくみ、胸水、吐き気、下痢、筋肉痛、肝障害、腎障害などがといった副作用が起こることがあります。適切な対処によって、内服を続けることがほとんどですが、継続が困難な場合や効果が不十分であると考えられるときには薬剤を変更したりします。また長期に内服中に心筋梗塞や脳梗塞、末梢動脈閉そく症がおこることがあり、十分な注意が必要です。急性期の治療では、チロシンキナーゼ阻害剤では不十分なことも多いです。

急性白血病と同様の抗がん剤治療が併用したり、同種造血幹細胞移植を検討します。