骨髄異形成症候群
概要
血液の主な成分である血液細胞(白血球、赤血球、血小板)は、骨の内部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞が増殖し、さまざまな細胞に成長(分化)することによってつくられます。
骨髄異形成症候群とは、血液細胞のおおもとの造血幹細胞に異常が起こった病気です。成熟した血球に成長できなくなり、正常の血液細胞がつくられなくなります。異常な造血幹細胞からつくられた血液細胞は、正常な働きが障害されたり、また形の異常(異形成)が見られたりします。正しく成長できないため未熟な細胞のままでとまってしまったり、細胞が途中で壊れてしまったりします。骨髄異形成症候群では、まず血液検査で、貧血、血小板減少、白血球異常が見られます。進行すると、急性骨髄性白血病に移行することがあります。主に、中高齢者に多い疾患とされ、高齢化により、次第に増加傾向にあります。
診断
血液検査をおこなって、血液細胞の数や、芽球がないか、形態に異常がないかを調べます。さらに骨髄検査を行い、造血の状態や芽球の有無、また染色体異常がないかを調べます。
骨髄検査
分類
骨髄異形成症候群は、血液中や骨髄中の芽球の数の割合や形態の異常の種類、程度によって、分類されます。芽球の割合が多いほど、病状がすすんでいると判断されます。(表1)芽球の割合が20%こえた時点で、急性骨髄性白血病に移行したと診断します。
表1:WHO分類2017年版
単一系統に異形成を有する骨髄異形成症候群(MDS-SLD) |
多系統に異形成を有する骨髄異形成症候群(MDS-MLD) |
環状赤芽球を伴う骨髄異形成症候群(MDS-RS) 単一系統に異形成を有する(MDS-RS-SLD)
多系統に異形成を有する(MDS-RS-MLD)
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単独5番染色体長腕欠失を伴う骨髄異形成症候群(MDS with isolated del(5q)) |
芽球増加を伴う骨髄異形成症候群(MDS-EB)
MDS-EB-1
MDS-EB-2
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分類不能型(MDS-U) |
骨髄異形成症候群の病状は患者さまによって様々であるため、検査結果を評価、分類して、病気や治療経過の見通し(予後)を予測します。
症状
症状が見られないこともありますが、血球が減少することで、下記のような症状がでることがあります。
- 赤血球減少にともなう貧血症状(ふらつき、息切れ、だるさ、動悸など)
- 白血球減少にともなう感染症の症状(発熱など)
- 血小板減少にともなう出血症状(鼻血、歯ぐきの出血、点状出血、紫斑など)
治療
患者さまの身体状態や病状、予後予測(IPSS:国際予後スコアリングシステム、IPSS-R:改訂国際予後スコアリングシステム)に応じて、治療がおこなわれます。
1. 薬物療法
芽球が増加してきたもの、高リスクのものでは、急性白血病と同様に抗がん剤を投与して、芽球の数を減らすことを目指します。従来からの抗がん剤にくわえて、最近ではDNAメチル化阻害剤のアザシチジンが使用されることが多いです。低リスクのものについては、免疫抑制療法がおこなわれたり、エリスロポエチン製剤、蛋白同化ホルモンを投与するが用いられることもあります。5番染色体長腕欠失のある骨髄異形成症候群については、免疫調整薬のレナリドミドが使用されることもあります。
2. 同種造血幹細胞移植
唯一、治癒が期待できる治療で、正常な造血幹細胞を移植して、造血を回復させることを目指します。若年者で、急性白血病に移行するリスクが高いかた、予後予測が悪い高リスクのかた、頻回の輸血が必要なかたなどで検討されますので、診断早期から、連携施設と協力のもと準備を進めていきます。
3. 支持療法
骨髄異形成症候群による様々な症状を緩和する目的で行われます。
- 輸血療法:血液検査で貧血や血小板減少が進行したり、それにともなって症状がでてきたりしたときに、不足した血液細胞を補うため輸血を行います。
- 鉄過剰症に対する治療:頻回の赤血球輸血により、過剰な鉄分が体にたまり臓器に沈着することで、臓器障害をきたすことがあります。そのために、鉄の排出をうながす薬を投与します。
- 抗生物質、抗真菌剤:白血球減少により抵抗力が落ちて感染症を起こしやすくなりますので、感染症予防や発症したときに、抗生物質や抗真菌薬などで治療を行います。