卵巣がん
疫学
卵巣から発生するがんです。
日本における罹患数・死亡数はともに増加傾向にあり、2016年の推定死亡数は4,758例と報告されています発症年齢は60歳代にピークを迎え、40~50%の症例がIII・IV期です。
病因
発がん機構はいまだ十分に解明されていません。良性から徐々に悪性化し進行が比較的緩徐でI期で発見されることが多いタイプと、良性病変を経ずがん化し進行が早く診断時II期以上であることが多いタイプがあります。卵管に発生したがんが卵巣へ直接進展することがあるという新たな知見も周知されています。発がんのリスクを上昇させる因子としては、未産、肥満、ホルモン薬の使用などが報告されています。
症状
自覚症状に乏しく、早期発見が困難で、無症状のうちに進行していることが多い病気です。初発症状は、腹部腫瘤感、腹部膨満感、排便・排尿障害、腹痛、摂食困難などです。
診断
確立された検診法(スクリーニング検査)はありません。多くの場合、超音波で発見され、CTやMRIなどの画像検査で悪性所見や進行度を調べます。
進行期
I期 | 卵巣あるいは卵管内限局発育。IA期、IB期、IC期に細分類されます。 |
---|---|
IA期 | 腫瘍が一側の卵巣あるいは卵管に限局し、卵巣または卵管の被膜への浸潤が認められないもの、腹水細胞診にて悪性細胞の認められないもの。 |
IB期 | 腫瘍が一側の卵巣あるいは卵管に限局し、卵巣または卵管の被膜への浸潤が認められないもの、腹水細胞診にて悪性細胞の認められないもの。 |
IC期 | 腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが、以下のいずれかが認められるもの。 |
IC1期 | 手術操作による被膜破綻。 |
IC2期 | 自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤。 |
IC3期 | 腹水細胞診に悪性細胞が認められるもの。 |
II期 | 腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤部副腔内臓器への進展を認めるもの。IIA期とIIB期に細分類されます。 |
IIA期 | 進展ならびに/あるいは転移が子宮ならびに/あるいは卵巣に及ぶもの。 |
IIB期 | ほかの骨盤部副腔内臓器に進展するもの。 |
III期 | 腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいはリンパ節転移を認めるもの。IIIA期、IIIB期、IIIC期に細分類されます。 |
IIIA1期 | リンパ節転移陽性のみを認めるもの。 |
IIIA2期 | リンパ節転移の有無にかかわらず、骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの。 |
IIIB期 | リンパ節転移の有無にかかわらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの。 |
IIIC期 | リンパ節転移の有無にかかわらず、最大径2cmを超える腹腔内播種を認めるもの。 |
IV期 | 腹膜播種を除く遠隔転移。IVA期とIVB期に細分類されます。 |
IVA期 | 胸水中に悪性細胞を認める。 |
IVB期 | 肝臓などの実質や腹腔外臓器に転移を認めるもの。 |
治療
通常は手術により子宮や付属器(卵巣・卵管)や周囲のリンパ節や大網(胃の近くにある脂肪で形成される臓器)をとります。手術後にがんが他の部位へ転移したり再発する危険性が高い場合や病変をとりきれなかった場合は、術後化学療法(抗がん剤の点滴)をします。良性の卵巣腫瘍は腹腔鏡で手術できることが多いですが、卵巣がんの手術は下腹部から臍の上までお腹を大きめに開ける開腹でします。