産婦人科

メッセージ

小柴 寿人部長 小柴 寿人(こしば ひさと)

当院産婦人科では安全で的確な診療を心がけています。産科では異常を見落とすことがないよう妊婦検診をすることに努め、なるべく自然な形で分娩していただくことを目指しています。婦人科では正しい診断をして最善の治療方針を決めることに努め、手術をするときは腹腔鏡や腟式手術など低侵襲な治療が可能なケースは出来るだけ体の負担が少ない方法をとるようにしています。当院は周産期センターではありませんので、早産になる危険性が高いケースや重い合併症がある妊婦さんは他院へ紹介することがあります。

また、婦人科症例は疾患の進行度や合併症の程度によっては他院に紹介することがあります。当院で管理できる症例は、安全かつ的確な診療をするよう医師、看護師、助産師でチーム医療を行い、小児科と定期的にカンファレンスをし、麻酔科、内科、外科、放射線科など他科と連携しています。最近、産後ケアを要する方が増えているため、当院で分娩された方だけでなく、他院で分娩された方の産後ケア入院も受け入れています。

産婦人科の特色・強み

当科は日本産科婦人科学会、ならびに母体保護法に基づく指定医の認定施設となっており、常勤医 4名、非常勤医 2名で診療にあたっています。産科および婦人科において安全で的確な診療に努めています。産科では、なるべく自然な分娩に努めるとともに、新生児の管理は小児科とともに行います。また当科は「日本赤十字社近畿さい帯血バンク」のさい帯血採取施設にも指定されており、多くの方の協力を得てさい帯血による移植医療にも積極的に貢献しています。

当科の治療方針

婦人科疾患

子宮腫瘍や卵巣腫瘍などでは、まず治療が必要かどうかについてMRIなども含めて十分に検討することとし、治療では手術を基本とし、可能な場合は腹腔鏡や腟式手術を実施しています。そのほか、性感染症の診断や治療を行っています。

子宮がん検診で異常があった方には生検などの精査をしています。疾患の進行度や合併症の点から当院での治療が困難な場合は高次施設へ紹介します。

婦人科で扱う女性特有のがんについて

子宮内膜症

子宮内膜症は、本来は子宮の内側にのみ存在するはずの子宮内膜組織が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で増殖、剥離を繰り返す病気です。子宮以外の場所で増殖した子宮内膜組織は腹腔内にとどまり、炎症や痛み、癒着の原因になります。子宮内膜症の自覚症状で最も頻度の高いものが、月経痛です。月経の回数を重ねるごとに痛みが強くなっていく場合が多く、病気の進行に伴い腰痛や下腹痛、性交痛、排便痛、不妊などの訴えも多く見られます。治療法は手術やホルモン薬です。

子宮脱

子宮脱(子宮下垂とも言います)は、骨盤底筋肉や靭帯が伸びて弱まり、子宮の正常な支持が失われて膣へ下垂し、症状がひどくなると腟外へ脱出する疾患です。妊娠、出産により、一部の女性ではこれらの筋肉が弛緩します。また、腹圧をかけることが多い生活をすることも助長因子といわれています。子宮脱は、女性であれば誰しもがかかる可能性があり、1回以上の経腟分娩を経験した閉経後の女性はリスクが高くなります。子宮とともに膀胱が下垂する膀胱瘤や直腸が下垂する直腸瘤を併発することがあります。下記のような症状が出ることがあります。

  • 腟にピンポン玉のようなものが触れる
  • 椅子に座るとボールの上に座っている感じがする
  • トイレが近い
  • 尿が出しづらい
  • 排尿してもすっきりしない
  • 尿が漏れてしまう

治療法は手術やペッサリーを腟内に留置する保存的治療です。

異所性妊娠

異所性妊娠とは、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床することをいい、着床部位によって卵管妊娠、卵巣妊娠、腹腔妊娠、頸管妊娠などに分類されます。最も頻度の高いものは卵管妊娠で、異所性妊娠の約95%を占めます。無月経や不正出血を認めることも多く、そのほかの初期症状では、つわりのような吐き気、腹痛などがありますが、まったく無症状の場合もあります。

気をつけなければならないのは腹痛で、卵管などの弱い部分で妊娠が成立すると、破裂が起こることがあり、お腹の中で大量出血し、最悪の場合では出血性ショックで死亡してしまう可能性もあります。こうした腹腔内出血は、外からの見た目では分からず、腹痛や性器出血が初期の症状となります。

性器クラミジア感染症

性器クラミジアの主な症状では下記が考えられます。

  • 性器に軽いかゆみがある
  • おりものの増加
  • 排尿時に軽い痛みが出ることがある
  • 陰部の不快感

感染してから症状が出るまでの期間は、1〜4週間程度で、放置すると症状が悪化し、男性では精巣上体炎や男性不妊症、女性では、卵管炎・腹膜炎・子宮外妊娠・不妊症の原因になることもあります。

更年期障害

閉経前の5年間と閉経後の5年間とを併せた10年間を「更年期」といい、症状が重く日常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。更年期障害の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことで、その上に加齢などの身体的因子、成育歴や性格などの心理的因子、職場や家庭における人間関係などの社会的因子が複合的に関与することで発症すると考えられています。主な症状は、顔のほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗です。

チーム医療(産婦人科)

当院で出生した新生児は、産婦人科と小児科で連携して管理します。呼吸状態が安定するのに時間がかかる場合は、保育器に入れたり酸素を投与するなどの措置をとります。血糖値が低い場合はブドウ糖の点滴をします。黄疸(皮膚が黄色くなること)が強い場合は光線療法をします。

分娩を安全に取り扱えるように、産婦人科医師、小児科医師、助産師で週1回カンファレンスを開き、当院で分娩される予定の方についての情報を共有しています。産後にご家族など周囲のサポートがうすい方は産後ケア入院をしていますが、退院後は必要に応じて地域の保健師にも支援してもらえるよう連携しています。

また、手術を安全に行えるように、産婦人科医師と手術室の看護師とで週1回カンファレンスを開き、当院産婦人科で手術を受けられる予定の方についての情報を共有しています。全身麻酔や脊髄くも膜下麻酔で手術をするときは麻酔科の管理のもとで施行します。手術時に他科の支援が必要なときは、外科や泌尿器科と共同で手術をします。

婦人科がんの方に抗がん剤の投与(化学療法)をするときは、薬剤師および腫瘍内科と連携し、文献的な証拠に基づいて、薬の種類や投与量を決め、副作用対策にも努め、薬剤師による指導も行います。

医師一覧

部長小柴 寿人(こしば ひさと)

資格
  • 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
  • 母体保護法第14条にもとづく指定医
専門領域
  • 産婦人科全般

非常勤本山 敏彦(もとやま としひこ)

資格
  • 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
  • 母体保護法第14条にもとづく指定医
専門領域
  • 産婦人科全般

診療実績

2022年度

外来患者数
39.4人/日
外来紹介件数
56.0件/月
入院患者数
10.6人/日
平均在院日数
5.8日
分娩件数
207件/年

手術実績

開腹手術
80件
子宮脱手術
16件
子宮頸部円錐切除術
31件
腹腔鏡下卵巣腫瘍手術
55件
腹腔鏡下膣式子宮全摘術
37件

研究

学会(2022年度)

研究会(2022年度)