真性赤血球増加症/真性多血症・本態性血小板血症

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概要

血液の主な成分である血液細胞(白血球、赤血球、血小板)は、骨の内部にある骨髄で、血液細胞のもとになる造血幹細胞が増殖し、さまざまな細胞に成長(分化)することによってつくられます。

この造血幹細胞に異常がおこり、血球の産生が亢進する病気を、骨髄増殖性腫瘍といいます。主に赤血球が異常に増えてしまうものを真性赤血球増加症あるいは真性多血症といい、主に血小板が異常にふえてしまうものを本態性血小板血症といいます。

真性赤血球増加症/真性多血症

おもに赤血球の産生が亢進しますが、多くの場合赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加します。血液粘度があがり、流れが悪くなることで、血管のなかに血のかたまり(血栓)が生じやすくなります。50-60歳の方に多く、やや男性に多い傾向があります。経過中に、急性白血病や骨髄線維症などの移行することがあります。

1)症状

無症状や、症状がはっきりせず、健康診断や他の病気の検査で、血液検査異常として発見されることが多いです。病状が進行すると、末梢血中の赤血球数が著しく増加するために、赤ら顔になったり、目が充血したり、入浴後に全身がかゆくなるといった症状が出ることがあります。また、血液の粘度があがることで血液の流れが悪くなるために、頭痛、めまい、耳鳴り、手先足先の痛み、発赤などの症状が現れたりもします。また血管に血のかたまり(血栓)がを作り、心筋梗塞や脳梗塞、肺塞栓症などを起こすことがあります。また肝臓や脾臓がはれることで、腹部膨満感や違和感を自覚されることがあります。

2)診断

血液検査で赤血球がふえているときに疑います。赤血球が増える原因がほかにないかを調べるために、問診でこれまでにかかった病気(肺や心臓の病気、悪性腫瘍など)や血栓症の既往歴、また生活歴や内服歴、喫煙歴などを確認します。触診で肝臓や脾臓の腫れがないかを確認し、動脈血の酸素飽和度を測定します。

血液検査では、血液細胞の数や形態、血清エリスロポエチン濃度、血清ビタミンB12などをしらべます。さらに骨髄検査を行い骨髄液や骨髄組織を採取して、血液細胞の形態や造血の様子を詳しく調べます。異常がうたがわれるときには、血液検査や骨髄検査で、原因と推定される遺伝子(JAK2遺伝子)の変異検査をおこないます。

3)治療

真性赤血球増加症では、血栓症の発症をおさえることが目標になります。一般的な血栓症のリスクファクターである、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの併存疾患があるときには、まずはこれらの治療を十分に行うことが重要です。そのうえで、以下のような治療を行います。

1. 瀉血(しゃけつ)療法

献血と同じように、血液を抜き取る(1回200-400ml前後)ことで、赤血球の数を減らします。定期的に行われることが多いです。もっとも一般的な治療法です。

2. 薬物療法

血栓症の予防のために、抗血小板剤(低用量アスピリンなど)が投与されます。また赤血球の増加が著しいとき、血栓症の既往があったり、血栓症をおこすリスクが高いと考えられるとき、血栓症による症状があるとき、高齢者の場合は、ハイドロキシウレアという抗腫瘍剤を内服していただき、血液細胞の数を減らします。ハイドロキシウレアでコントロールが難しいときには、JAK阻害剤のルキソリチニブを投与します。

ハイドロキシウレアは足の潰瘍を、ルキソリチニブは不整脈や頭痛など症状がでることがあるため、注意が必要です。いずれの治療も、真性赤血球増加症を治癒させるものではありませんが、病気をコントロールし、合併症のリスクを減らすことが可能です。通常、病気の予後は比較的良好ですが、ときに骨髄線維症や急性白血病に進行することがあります。

本態性血小板血症

おもに血小板が異常に増えてしまう病気ですが、多くの場合、赤血球や白血球も増加します。血液粘度があがり、流れが悪くなることで、血管のなかに血のかたまり(血栓)が生じやすくなります。50歳以降の方に多く、やや男性に多い傾向があります。経過中に、急性白血病や骨髄線維症などの移行することがあります。

1)症状

症状がはっきりせず、健康診断や他の病気の検査の際に、偶然発見されることがあります。本態性血小板血症でも、血小板数が著しく増加すると、血栓ができやすくなるため、真性赤血球増多症と同様の症状がみられることがあります。また血小板が増えすぎることで、逆に血小板の機能が低下するため出血しやすくなり、あざができたり、鼻血や歯ぐきからの出血、消化管出血を起こすことがあります。

2)診断

血液検査で血小板がふえているときに疑います。血小板が増える原因がほかにないかを調べるために、問診でこれまでにかかった病気(肺や心臓の病気、悪性腫瘍など)や血栓症の既往歴、また生活歴や内服歴、喫煙歴などを確認します。血液検査では、鉄欠乏がないことや炎症反応(CRP)が正常であることを確認します。骨髄検査を行い骨髄液や骨髄組織を採取して、血液細胞の形態や造血の様子を詳しく調べます。異常がうたがわれるときには、血液検査や骨髄検査で、本態性血小板血症でみられることのある遺伝子(JAK2遺伝子、CARL遺伝子、MPL遺伝子)の変異検査をおこないます。

3)治療

本態性血小板血症では、血栓症のリスクが少ない場合は、無治療で経過観察されます。血栓症のリスクが低くても、心血管リスクファクター(喫煙、高血圧、脂質異常症、糖尿病)などのある方、JAK2変異があるかたでは、血栓症をおこすリスクを低下させるために、アスピリンやチクロピジンなどの血小板機能をおさえるお薬を投与します。また、過去に血栓症をおこされた方や高齢者など、血栓症をおこすリスクが高いと考えらえる方には、ハイドロキシウレアもしくはアナグレリドを投与して、血小板数を減らすようにします。アナグレリドには動悸や不整脈、出血などの副作用に注意します。

いずれの治療も、本態性血小板血症を治癒させるものではありませんが、病気をコントロールし、合併症のリスクを減らすことが可能です。通常、病気の予後は比較的良好ですが、ときに骨髄線維症や急性白血病に進行することがあります