総合診療科

メッセージ

2007年に超高齢化社会に突入して以降、わが国の高齢化率(全人口にしめる高齢者の割合)は上昇の一途をたどり、2025年には高齢化率が30%に達すると予測されています。高齢者は平均5-6の疾患を持つ、「多病」の状態にある方が多いことが知られています。

複数の病気をお持ちの患者さんや、身体のどこが悪いかはっきりしない患者さんにとっては「どの診療科を受診すればよいのかわからない」というケースもよくあります。そのような場合に、大切なゲートキーパーの役割を果たすのが『総合診療科』になります。

総合診療科の医師は、問診・診察と簡単な検査で全身を評価し、必要があれば専門医へ紹介し、専門性が高くない病態であれば継続的に診療し、また状態が落ち着い

ていらっしゃれば、かかりつけ医へ逆紹介したりいたします。

入院が必要だが必ずしも専門科での診療は必要ではない疾患(たとえば「誤嚥性肺炎」「尿路感染症」「敗血症」など)で救急受診された患者さんは、基本的に『総合診療科』で入院いただき、内科医が診療をしております。『総合診療科』では、入院のきっかけになった疾患だけではなく、退院後の生活環境も見据えたサポートを、リハビリ技師・看護師・社会福祉士・薬剤師などの多職種で対応させていただいています。

医療従事者の方へのメッセージ

現代医学はさまざまな専門分野に細分化されていますが、あらゆる医師は、スペシャリストであると同時にジェネラリストでもあってほしいと考えています。超高齢社会のわが国では、入院患者さんの多くが高齢者です。高齢者では、同時に複数病態をもっていたり、薬剤による副作用が顕在化しやすかったり、症状が非典型的であったりするため、診断やマネジメントが難しいケースが多いのが特徴です。また、進行がんや神経難病・認知症などをお持ちの高齢者では、解決案に唯一解がないこともしばしばであり、患者や家族のナラティブに寄り添って提案することが求められます。

超高齢社会においては、幅広く、多面的に、そして柔軟に、目の前の患者さんを「総合的に診ること」がすべての医師に求められているのではないでしょうか?
「総合診療科」では、そのような多面的な視点を学ぶことができると考えています。

  1. 幅広い知識や視野での診察
  2. 多岐にわたる疾患に対する初期対応、専門医との連携
  3. 個々人の希望や社会背景を考慮した医療
  4. 退院後の生活を見据えた医療、予防医学
  5. 地域に根差し、信頼される、相談しやすい診療科

を目指しております。

総合診療内科の特色・強み

『総合診療科』では、消化器や循環器、呼吸器といった従来の臓器別観念にとらわれることなく、内科系疾患を中心に幅広くかつ柔軟に診療を行います。
複数の病気が併存している患者さまや、発熱や倦怠感など原因臓器が特定できない患者さま、専門科で確定診断に至らなかった患者さまなどが対象です。

当院の総合診療科の特徴は、専門的な知識を有する多数のスペシャリストが一つのチームを構成していることです。各専門家と連携をとりながら、個々の患者さまに適した総合的かつ良質な医療を提供できるよう心がけています。必要に応じて院内の専門科に転科していだくことがあります。

2023年の実績:入院総数 894名(緊急入院 96%、救急車搬入 60%)

呼吸器感染症
243例
新型コロナウイルス
171例
尿路感染症
117例
代謝・内分泌疾患(脱水含)
62例
敗血症
29例
消化器疾患
24例
循環器疾患
28例
脳神経疾患
20例
アナフィラキシー
11例
膠原病
5例

医師一覧

専攻医正木 暁(まさき さとし)

専門領域
  • 一般内科

専攻医國延 拓也(くにのぶ たくや)

専門領域
  • 呼吸器内科
総合診療科部長 滋賀 健介 (脳内)
教育担当部長 川崎 達也 (循)
診療担当部長 橋本 善隆(糖)
副部長 堀 雅俊 (救) ,山根 祐介(血)
指導医チーム 足立 大也(腎),橋本 善隆(糖),吉岡 希(糖),濱澤 悠佑 (糖),塩田 晃史(糖),清田 実希 (血),山根 祐介 (血),
山田 展久 (消) ,東 祐佳 (消),濱田 聖子(消),池田 佳奈美 (消) ,廣瀬 瞳 (消),田邑 愛子 (脳内),酒井 千恵子(循) ,
本田 早潔子 (循),川俣 博史(循),須永 敦彦 (膠)
主治医チーム 正木 暁(総),國延 拓也(総),堀内 萌生(糖),小笠原 仙之(糖),秋元 遥(糖),桝井 太輝(呼),出海 正太郎(呼),
西川 晶(呼),山岡 燎平(呼),村尾 泰一(血),白井 鈴華(消),田中 大輝(消),山下 裕暉(消),小澤 礼生(消),
松田 樹生(脳内),江原 秀慧(腎)
研修医チーム 積木 勇人,髙林 彩香,大江 彩香,大嶺 佑実,足立 沙瑛子,江上 晟,角本 拓也,何 健明,金森 祐樹,西機 恵実

資格

  • 日本内科学会認定医・指導医・総合内科専門医
  • 日本救急医学会救急科専門医
  • 日本集中治療医学会集中治療専門医
  • 日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医
  • 日本病態栄養学会病態栄養専門医・指導医
  • 日本神経内科専門医・指導医
  • 日本頭痛学会頭痛学会専門医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 日本臨床神経生理学会認定医
  • 日本循環器学会認定循環器専門医
  • 日本核医学会核医学専門医
  • 日本心臓リハビリテーション学会認定指導士
  • 日本病院会認定病院総合医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医
  • 日本消化管学会胃腸科専門医・指導医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本血液学会血液専門医・指導医
  • 日本造血幹細胞移植学会造血幹細胞移植認定医
  • 日本輸血・細胞治療学会認定医
  • 日本骨髄バンク調整医師

教育・研修

  月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
心電塾 モーニングレクチャー
ERランチ
カンファレンス
ERランチ
カンファレンス
各種勉強会 総合診療科カンファレンス
バイリンガルカンファレンス(第3水曜日)

総合診療科カンファレンス

総合診療科に入院中の症例検討会です。主治医のプレゼンテーション後に、様々な領域の専門医などからの質問やアドバイスがあります。このプロセスを通じて参加者全員が知識を高め、より良質な医療の提供が可能になります。

総合診療科カンファレンスの様子

ERランチカンファレンス

昼食時に実施している救急症例のカンファレンスです。相互の貴重な臨床経験を共有することにより、守備範囲を広くすることを目的として開催しています。情報共有のため専用の投稿サイトがあります。

松下ERランチ・カンファレンス

ERランチカンファレンスの様子
ERランチカンファレンスの様子

松下GIMカンファレンス

上記カンファレンスの一部を院外でも開催(年二回)しています。自験例を提示し診断過程の言語化と臨床推論の奥深さを共有できればと考えております。診療所の先生方が日常臨床で遭遇された興味深い症例を紹介するコーナーも用意しています。

松下GIMカンファレンス

松下GIMカンファレンスの様子

松下耳学問の里

院内でライングループを形成して毎日、異なったテーマのコンテンツを配信しています。 現在100名以上の方が自主参加されています。他のカンファレンスや日々の臨床での気づきも、随時投稿されて皆で情報を共有します。

  • 月:Let'sグラム染色(当院で行った染色から細菌を診断するクイズ)
  • 火:今週のNEJM症例(英語で提示された症例の治療方法の選択)
  • 水:今週の一枚クイズ(日常臨床で遭遇した一発診断可能な画像)
  • 木:クイズの答え(画像の解説と病態の詳細な説明やトリビアなど)
  • 金:聞く技術(ティアニー先生が提唱するレッドフラッグと想定疾患)

心電塾

昼食時に実施している救急症例のカンファレンスです。相互の貴重な臨床経験を共有することにより、守備範囲を広くすることを目的として開催しています。情報共有のため専用の投稿サイトがあります。

松下心電塾

バイリンガルカンファレンス

当院で経験した症例を英語でプレゼンテーションして、英語でディベートする会です。開催は不定期ですが、目標は月1回です。参加者は英語での発言に努め、英語表現に困れば日本語も使用可能です。その時は指導医から適切な英語の表現方法などのアドバイスがあります。基本的に発表する症例は英語論文の作成も同時に行います。

その他の勉強会

毎週木曜日の朝にはモーニングレクチャーを行い、各臓器専門科のスタッフが毎回異なる講義をしています。その他、症例検討会や薬剤説明、CT道場など様々な勉強会も実施しています。

論文

  1. Shako D, Kawasaki T, Shiga K, Shinagawa N, Miyoshi T, Oyamada H. Temporomandibular Joint Dislocation as a Trigger of Non-alcoholic Marchiafava-Bignami Disease: A Case Report. Matsushita MJ. 2023;61:31-35.
  2. Mase T, Kawasaki T, Hamada S, Hashimoto Y, Shiga K . A case of probable Waterhouse-Friderichsen syndrome due to Escherichia coli. Open J Clin Med Case Rep. 2022;8:1894.
  3. Yamaguchi K, Kawasaki K, Kotani T, Kunieda K, Kiyota K, Oyamada H. Pylephlebitis Associated with Diverticulitis in a patient with Protein C Deficiency. Matsushita MJ. 2021;60:15-19.
  4. Hotta Y, Kawasaki T, Kotani T, Okada H, Ikeda K, Yamane S, Yamada N, Sekoguchi S, Isozaki Y, Nagao Y, Murotani M, Oyamada H. A Case of Familial Mediterranean Fever without Fever. Intern Med. 2020;59:1267-1270.
  5. MunekawaC, Kawasaki T, Miyoshi T, Yamane Y, Okada H, Oyamada H. Acute Bromide Intoxication in a Patient with Preserved Renal Function. Am J Case Rep. 2020;21:e922019.
  6. Fujino Y, Kawasaki T, Kawamata H, Tamura A, Shiga K, Oyamada H. Cerebral Infarction with Pulmonary Thromboembolism due to Immobilization: A Case Report. Intern Med. 2020;59:2955-2959.
  7. Ikeda K, Kawasaki T, Hori M, Yamane Y, Oyamada H. A case of probable Waterhouse-Friderichsen syndrome due to invasive pneumococcal infection. Matsushita MJ. 2019;58:87-91.
  8. Yuasa K, Kawasaki T, Miki S, Yoshimura T, Okada Y, Oyamada H. Takotsubo cardiomyopathy in a patient with theophylline toxicity. Open J Clin Med Case Rep. 2018;1392.
  9. Yoshimura T, Kawasaki T, Shirota A, Saeki M, Okada Y, Okada H. Valacyclovir-induced Neurotoxicity in a Patient with a Preserved Renal Function. Intern Med. 2018;57:3213-3216.
  10. Yamane S, Kawasaki T, Hotta Y, Yoshitake H, Kotani T, Oyamada H. A case of hemorrhagic colitis due to Klebsiella oxytoca. Matsushita MJ. 2017;56:106-110.
  11. ShinomotoM, Kawasaki T, Sugahara T, Nakata K, Kotani T, Yoshitake H, Yuasa K, Saeki M, Fujiwara Y. First report of human parechovirus type 3 infection in a pregnant woman. Int J Infect Dis. 2017;59:22-24.
  12. Takemura K, Kawasaki T, Yasuda T, Mikami T, Kotani K, Sekoguchi S, Hotta S, Takeshita H, Ishii M, Oyamada H. Isolated Bladder Rupture After Trauma: A Case with Difficulty in Diagnosing. Matsushita MJ. 2017;56:24-29.
  13. Takemura K, Kawasaki T, Kotani T, Yuasa K, Yamada N, Oyamada H. Pneumatosis intestinalis. J Gen FamMed. 2017;18:450-451.
  14. 米田佑香,川崎達也,世古口悟,佐伯雅史,小谷知也,安田考志,小山田裕一.オートプシー・イメージングが診断に有用であったスタンフォードA型大動脈解離の1例.松仁会医学誌.2016;55:105-110.