眼科

メッセージ

眼科の診療は、視力検査を始め、様々な検査の結果を基に病気の診断・治療を行っています。眼科にはご高齢な方から子供まで様々な患者さまが来院され、それぞれに応じた検査を行う必要があります。
病気の内容によっても検査の内容は異なるので、病気に応じた検査も必要です。当院の眼科には視能訓練士が3名おり、患者さまの年齢や病態に応じて的確な検査を行なっています。よりよい視生活を送れるように、医師、看護師、視能訓練士、医師事務、受付それぞれ患者さま目線にたってチーム医療で地域の患者さまに貢献してまいります。

眼科の特色・強み

眼科の代表的疾患である白内障、緑内障、網膜剥離や最近増加している糖尿病網膜症、さらには小児の屈折異常、斜視、弱視など、幅広い疾患の治療を行っています。手術は白内障手術が最も多いですが、網膜疾患に対する硝子体手術の設備も整いました。診断機器ではスペクトラルドメインOCT(光干渉断層計、ハイデルベルグ・スペクトラリス)を導入し、より精度の高い緑内障、眼底疾患の診療に威力を発揮しています。

私たち眼科チームは患者さまによく見える、明るくなったと喜んでいただけるように努力します。

当科の治療方針

白内障

白内障とは

白内障は眼の中のレンズ(水晶体)がにごって視機能が低下する疾患です【図1】。
原因の大半は老化によるものですが、アトピー性皮膚炎、糖尿病、眼内の炎症、眼のけが、薬物(ステロイドなど)でもおこります。初期には、なんとなくかすんでみにくい、まぶしさがつよい、などの症状で始まります。進行すると視力が低下してきます【図2】。
水晶体全体が白く濁ると、ほとんど見えなくなってしまいます【図3】。

【図1】

【図2】

【図3】

白内障の治療

白内障の治療は、初期には点眼薬などで進行を遅らせるための治療をします。低下した視力を回復するためには白内障手術(水晶体再建術)を受けていただきます。手術では濁った水晶体の中身だけを砕いて吸い出し、残したカプセルの中に眼内レンズ(人工水晶体)を入れるようにします【図4~図7】。

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

当科では患者さまの眼に対する負担ができるだけ少なくなるように、小さな切開から手術を行うように工夫をしています。手術は局所麻酔で15~30分程度です。手術中痛くてつらいということは決してありませんから安心して受けていただけます。外来手術が基本ですが、1泊の短期入院での手術も可能です。個々の患者さまの治療方針は病状によって異なりますので、担当医にお問い合わせください。

手術の合併症

失明につながる重大な合併症に、術後眼内感染(ばい菌によって眼が化膿する)、駆逐性出血(手術中に眼内に大出血が起こる)があります。手術後眼内感染は2000~3000人に1人、駆逐性出血は数万人に1人の確率で起こる稀な合併症です。

術後の経過

手術当日はガーゼで眼帯をしますので手術をした眼を使うことはできませんが、もう一方の眼では普段通り見ることができます。術翌日からは透明の保護眼帯だけになりますので、手術した眼を使ってものを見ることができます。退院後も1週間程度は寝るときのみ保護眼帯をつけていただきます。洗顔や洗髪は術後3日目から可能です。眼球を強く押さえたり、打撲したりすることは長期にわたりさけなければいけません。目薬は術後3か月程度必要です。

一般に最大の視力を得るためには、術後も手元、遠方とも眼鏡を使用する必要があります。最近、“遠近両用”の眼内レンズが発売されていますが、まだ一般的ではなく、当科では採用しておりません。なお術後期待できる視力は病状によって異なりますので、担当医にお問い合わせください。

術後に視力が再び悪くなる最大の原因は後発白内障です。手術を受けた方の20%程に生じるとされ、眼内レンズを支えている水晶体のカプセルが再び濁ってくるためにおこります【図10】。
術後早期におこることもあります。治療はレーザー手術(YAGレーザー後嚢切開術)でにごりを取ります。眼球を切りひらくことなく治療ができますので心配いりません【図11】。
もちろん入院の必要もありません。これ以外にも術後に病状が変化することがありますので、必ず担当医の指示通り、定期検査を受けましょう。

【図10】

【図11】

斜視・弱視

斜視とは

両眼の視線がそろわない状態で、眼球が上下や左右にずれる病気です。眼の位置がずれると、両眼で正しくものを見ることができなくなります。このために視力の発達が妨げられたり(斜視弱視)、両眼でものを見て立体感をつかむ機能が弱くなったりします(両眼視機能異常)。

また外見上、眼のずれが目立つことは学校生活や社会生活に支障をきたすことがあります。斜視は、斜視以外の眼の病気が原因で起こることもありますから、検査を行って他の病気がないかどうか確認しておく必要があります。

めがねで治る斜視

斜視の中には高度の遠視や調節の異常でおこるものもあり、手術をせずに眼鏡で治療できることもあります【図15】。
治療方針や期待できる治療効果は病状によって異なりますので、詳しくは担当医にお尋ねください。

【図15】

弱視(機能的)とは

小児において、遠視や乱視などの屈折異常や斜視、先天白内障や眼瞼下垂などが原因で視力の発達が妨げられると、眼鏡を装用しても視力が出ない弱視(機能的)になることがあります。
視力は成長に伴ってだんだん獲得する能力で、3歳ごろになると半数以上が1.0見えるようになるとされています。この視力の成長は、他の成長とともにいつかは止まります。感受性期である10歳頃までに治療をすることが大切です。
当科では国家資格を持った視能訓練士が検査や訓練に携わっています。

緑内障

緑内障は視神経が障害される病気の一つで、視野が狭くなり、最終的には視力も低下します。ひとたび神経が障害されておこった視機能の低下は、治療で取り戻すことができないため、進行するとやっかいな病気です。緑内障には多くの種類の病型があり、病気の程度も患者さまによって異なります。

緑内障の治療

治療の基本は眼圧(眼の内圧)を下げることが主になります。この目的で目薬、レーザー手術、入院して眼球を切開して行う手術など様々な手段を用います。当院では、的確な診断をおこなって、患者さまの病状、年齢、社会的環境などを総合的に判断して治療方針を決めています。

緑内障の手術

点眼薬で治療効果が不十分の方には、手術を考慮します。手術にはレーザー手術と、眼球を切開する手術があります。

レーザー手術

治療用のコンタクトレンズを装着して、眼内の組織にレーザー光を照射します。刃物で眼球を切開しないので出血や感染のおそれはありません。患者さまは座ったまま5~10分間、機械のあご台にお顔をのせておくだけです。
通常は外来で施行可能で入院の必要もありません。麻酔は目薬のみで痛みもありませんし、眼に負担の少ない治療です。レーザー手術の方法、適応や期待される効果は病状によって異なりますので、担当医にご相談ください。

切開して行う緑内障手術

目薬を用いた治療、レーザー手術などが十分にきかないときは、入院して切開手術が必要です。
残念ながら緑内障で悪化した視野や視力は現在の医学では手術を持ってしても取り戻すことはできません。また眼圧をよく下げておいても進行するタイプの緑内障もあります。それでも、眼圧が低い方が進行が遅くなることが知られているので、できる限り眼圧を下げる治療をするのです。治療方針や期待できる治療効果は病状によって異なりますので、詳しくは担当医にお尋ねください。

網膜硝子体疾患

網膜とは、眼球奥の内側を覆う膜で、カメラで例えるとフイルムの役割をしています。硝子体は、眼球内部の水晶体より奥の大部分を満たしているゼリー状の組織で、眼球の形を保つ役割をしています。

網膜の中でも黄斑は、視力をつかさどる重要な細胞が集中している中心部です。この黄斑に病気の影響でむくみ(黄斑浮腫)がおきたり異常な血管(脈絡膜新生血管)が現れたりすると、ものが歪んだり暗く見えたり、かすんだりします。
代表的な病気としては、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性症、近視性網膜症などがあります。
診断には、視力検査、眼底検査に加え、光干渉断層計(OCT)を用いて網膜組織の断面撮影を行います。

抗VEGF薬硝子体注射

当科ではこうした病気に対する治療として、原因となる血管内皮増殖因子(VEGF)を阻害する、抗VEGF薬の硝子体注射を積極的に行っています。
抗VEGF薬は、白目の部分から硝子体内に注射します。注射をして約1ヶ月後に検査と診察を行い、網膜の状態を確認します。その後は状態が安定するまで必要に応じて注射を行います。

硝子体手術

黄斑前膜(上膜)、黄斑円孔、硝子体出血、糖尿病網膜症などの病気に対しては、適応があれば硝子体手術を行います。硝子体手術では、硝子体の一部を取り除き、網膜の病気を治療します。

※医師の異動により、現在は硝子体手術の対応ができません。ご了承ください。

光干渉断層計(OCT)を導入

2011年度にスペクトラルドメインOCT(光干渉断層計、ハイデルベルグ・スペクトラリス)を導入しました。従来、診断が難しかった黄斑変性症、黄斑円孔、網膜上膜形成症などの病状が手にとるようにわかります。患者さまにも所見や治療の成果をわかりやすく見ていただけます。また緑内障診療では、緑内障で傷んだ網膜神経線維層の厚さを測ることができ、診断の精度が向上します。まぶしさもなく、短時間で可能な検査です。

視力に大切な黄斑部網膜の組織が、地層の様な断面図として示されています。網膜の厚さを自動で測定してカラー表示することもできます。

認定施設

  • 日本眼科学会専門医制度研修施設認定

医師一覧

部長大槻 陽平(おおつき ようへい)

資格
  • 日本眼科学会認定眼科専門医
専門領域
  • 眼科一般
  • 白内障

スタッフ紹介

  • 視能訓練士

診療実績

2022年度

外来患者数
53.0人/日
外来紹介件数
45.0件/月
入院患者数
0.4人/日
平均在院日数
1.1日

手術実績

水晶体再建術(白内障手術)
554件
緑内障手術
3件
網膜硝子体手術
23件
斜視手術
0件
前眼部手術等
26件

レーザー手術実績

網膜光凝固術
95件
レーザー虹彩切開術(LI)
0件
後発白内障手術(YAGレーザー後嚢切開術)
144件

治療実績

抗VEGF薬硝子体注射
142件