膠原病・リウマチ内科

メッセージ

井上 拓也部長 井上 拓也(いのうえ たくや)

関節リウマチと言われると一度はどこかで聞き覚えのある病名かと思いますが、膠原病と言われると耳馴染みのない方が多いかもしれません。

医学的に膠原(膠原線維)というと主にコラーゲンのことを指します。何だかお肌に良さそうなイメージがあるかもしれませんが、全身を支える強固な骨や筋肉から、いかにも柔らかそうな組織である眼球まで、多くの臓器の骨組み(結合組織)として全身のあらゆる臓器に存在しています。古くは膠原病の患者さんの様々な臓器の結合組織中に変性したコラーゲンが見られるという考えから膠原病と呼ばれるに至ったようです。

しかし、膠原病におけるコラーゲンの増加の多くは、別の原因で傷害された組織の修復過程などを見ているに過ぎません。実際に膠原病科として扱うのは、『免疫系の異常』により『全身の複数の臓器が傷害されうる』病気のことを指し、全身性の病気であるがゆえに様々な臓器に先述のような傷跡が見られます。

近年医療の高度化により臓器細分化が進んでいますが、たとえ一人の患者さんで色々な臓器の障害が起きたとしても、病気は一つであり患者さんは一人の人間なので、ひとりひとりの患者さんの全身の状態を見ながら、複数の科で連携しながら治療を進めていく必要がある疾患です。

膠原病・リウマチ内科の特色・強み

リウマチや膠原病では全身の様々な臓器に病変を来します。

  • 総合病院の利点を生かして、必要に応じて各臓器専門科と連携しながら、診断や治療を進めていきます。
  • 単独臓器の疾患として見ていると時に見落とされがちな他臓器の病変も、個々人の状態に応じて臓器横断的に治療を検討していきます。
診察日
月・水・木・金

代表的な疾患

関節炎を主体とする疾患

関節リウマチ

手指や足趾など末梢の小さくてよく動く関節の複数に炎症を起こす、代表的な全身性自己免疫性疾患の一つです。リウマチというと変形した手指のイメージがいまだに強いかも知れませんが、病気に対する理解や画像診断(超音波検査やMRI)・治療薬の進歩により、変形や骨の破壊が起こる前に診断し治療を開始するのが標準的になっています。

古くは痛み止めしか治療が無かった病気ですが、ステロイド薬の登場により痛みや炎症は改善されたものの副作用に悩まされた時代から、メトトレキサートなどの経口抗リウマチ薬の普及により劇的に関節破壊の抑制が可能になる一方でそれでも数十%以上の方に骨破壊の進行がみられた時代を経て、現在は多種類の生物学的製剤やそれらと同等の効果をもつ経口薬の登場により、早期に適切な診断と加療が行えれば、骨の破壊や変形を起こすことなく病気の無い方と大きく変わらない生活が可能になりつつあります。

また、リウマチも関節のみの病気とは限らず、間質性肺炎や、皮膚や眼の細かな血管の炎症を併発することもあり、関節の治療と併せて適切な治療を行っていく必要のある全身性疾患です。

リウマチ性多発筋痛症 (PMR)

「リウマチ性」という病名が付いてはいますが、関節リウマチとは違って骨の破壊は起きず、肩~二の腕・股関節~大腿部の痛みで発症して、数日~数週間で急激に悪化することが多い病気です。

痛みの程度は人により様々で、痛みはないが寝返りや起き上がりに苦労する、両肩が上がらない、といった症状が痛みの自覚がほとんどなく発生する方もおられます。少量のステロイドが著効し後遺症などの発生しにくい病気ですが、しばしば関節リウマチと見分けが付きにくいケースもあります。

薬剤の反応性が悪かったり、長年少量のステロイドが止められず続けられていたところ、気が付いてみると変形や骨の破壊が出てきて、後になって関節リウマチであったことが判明するような例もあるため、最初の時点での診断が非常に重要な病気です。

脊椎関節炎と類縁疾患

関節リウマチでは背中や腰などの背骨(脊椎)や骨盤に炎症が起こる頻度は低いですが、脊椎関節炎では脊椎や骨盤の付近の関節の炎症を特徴とする病気です。

炎症が長引くと、リウマチのような骨の破壊よりむしろ、骨どうしが固まって動きが制限されてしまうような変化(強直)を起こしてくる病気です。腰背部の痛みの特徴として、炎症性腰背部痛と呼ばれ、① 若年発症 (30-40歳代までに発症)、② 安静時に悪化(夜間に痛みで覚める、早朝起床時に強く痛む)、③ 運動により軽快、などの特徴がみられます。

関節症状のみが起きる場合、強直性脊椎炎という文字通り脊椎の強直を来す(背骨が固まって可動性がなくなる)病気が典型的ですが、関節以外の病気でも似たような脊椎の病変を合併するものがあります。 乾癬性関節炎(尋常性乾癬に合併)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)に併発する関節炎、反応性関節炎(特定の感染症の後に併発)や、手のひらや足の裏に発疹がみられる掌蹠膿疱症に合併し前胸部の骨関節にも炎症がみられるものなどがあります。これらの病気の筋骨格症状では、脊椎だけでなく、アキレス腱や指趾全体が腫れるような手足の腱鞘炎や関節炎などを来すこともあります。

膠原病・血管炎

“消化器病” といった呼び方と同じく、”膠原病” というのは単一の病気を指す言葉ではなく、複数の病気の総称であり、代表的なものは以下のようなものがあります。

冒頭のお話の通り、免疫系の異常により全身の諸臓器や血管に傷害を来しうる病気であるため、同じ病名の付く方でも人によって症状は様々です。逆に異なる病気でも似たような病変を生じることも多く、外界との接点である皮膚や、酸素の取り込みや老廃物の排泄のために網目のように細かい血管が豊富に存在する肺や腎臓に病変が出る病気が多いですが、血液の細胞の障害や、内科の領域だけでなく眼科や耳鼻科領域の病変が出ることもあります。

皮膚病変

部位としては、比較的外界との接触が多い頭頸部や、手や膝下以下などの末梢が多いです。紅斑(発赤を伴う発疹)や紫斑(細かい紫色の出血跡)などがみられたり、凍瘡様皮疹(手のしもやけのような変化)が季節外れに起きたり、レイノー現象による循環不全(寒冷刺激で手指が真っ白になる)などがみられます。

肺病変

おもに間質性肺炎と呼ばれる肺が固くなり肺活量が低下していく病変がみられ、長引く咳や息切れなどの原因になります。間質性肺炎全体の20%程度が膠原病によるものと言われており、同じ間質性肺炎でも原因によって経過や治療法が異なるので慎重な判断が必要です。さらに、原因の特定できない間質性肺炎の患者さんの中にも、膠原病や血管炎らしい要素が少しなりとみられる例があり、肺以外の病変から診断が付くことや、後に膠原病が顕在化してくる例もあるため、他の臓器の病変が出ないかも併せてみていくことが重要です。

腎病変

蛋白尿や肉眼では分からない程度の血尿がみられますが、自覚症状としてむくみなどが出る頃には腎臓の機能がかなり悪くなってしまっていることも多いので、かかりつけの病院での検査や健診時の検尿異常などを放置しないことが大切です。

膠原病で起こり得る代表的な病変

実際には、これらの病変が単独ではなく、様々な程度で併発することが多いです。

医師一覧

部長井上 拓也(いのうえ たくや)

井上 拓也
資格
  • 日本内科学会認定医・総合内科専門医
  • 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医・指導医
  • 日本呼吸器学会呼吸器専門医
専門領域
  • 膠原病リウマチ内科

医員須永 敦彦(すなが あつひこ)

資格
  • 日本専門医機構認定内科専門医
専門領域
  • 膠原病リウマチ内科