習慣性顎関節脱臼

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顎関節脱臼とは

顎関節は頬骨弓後方にある関節窩から下顎頭が、正常顎運動範囲を大きく逸脱して自力で元の位置に戻せない状態を指します。そしてそれが頻繁に生じるものを習慣性顎関節脱臼と言います。

顎関節脱臼はあらゆる年齢層に起こる疾患ですが、年齢別の発生頻度では20歳代の若年者層と70〜80歳代の高齢者層に多い傾向にあります。顎関節脱臼でも繰り返し起こる習慣性顎関節脱臼は高齢者層に多く見られます。現在の日本は高齢化が進んでおり、それに伴い習慣性顎関節脱臼が増加傾向にあります。顎関節脱臼は直接に生命を脅かす訳ではありませんが、顎関節が脱臼した状態では通常の嚥下が困難となるため誤嚥性肺炎を生じることがしばしば見られます。

また習慣性顎関節脱臼を発症する高齢者では認知機能低下や要介護状態である場合が多く、医療機関を受診する際には付き添いが必要となり家族や介護者が連れて行く事になります。そして習慣性顎関節脱臼はいつ起こるのか予想がつきませんし、また毎日のように脱臼が生じる事もあります。家族や介護者はその度に仕事や予定を変更して医療機関へ付き添わなくてはならず大きな負担となります。

習慣性顎関節脱臼の治療

まずは保存的治療を行います。顎関節脱臼防止帽(チンキャップ)や弾性包帯による開口制限を数週間行うことで、開口制限を中止しても再脱臼を生じなくなる場合があります。しかし顎関節脱臼防止帽や弾性包帯の装着中でも脱臼が生じる、また装着を中止するとすぐに脱臼が生じてしまう場合には手術を行います。習慣性顎関節脱臼の防止手術にはいくつかの方法がありますが、当科では確実性の高い「顎関節隆起前方プレート埋入術」を行なっております。手術は側頭部に切開を加えて、顎関節部を明示した後に骨にチタン製プレートをネジで止めるというシンプルな手術です。切開の範囲は広いですが浅い創なので手術による身体へのダメージは少なく、早ければ術後4日目で退院可能です。

手術は全身麻酔で行いますので、高齢者の場合には全身麻酔ができる状態なのかを手術に先立ち精査します。また手術前にCT画像で顎関節部の形状の評価をします。そのため手術前に数回の外来受診が必要です。

また術後1週間で創部の抜糸を行ない、その後は数ヶ月おきにCTでチタンプレートの破折やスクリューの緩みがないか、また顎関節部の骨に異常が無いかを経過観察します。

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