がんの治療「放射線治療」

「根治目的はもちろん、緩和医療においても様々な場面で有用」

放射線治療

放射線治療は「切らずに治す」というコンセプトでがんに対する局所療法として100年以上の歴史がある治療方法ですが、正常組織へのしょうがいのため十分な照射ができないこともありました。それが近年のコンピュータ技術・物理工学技術の発達に伴い、治療装置が急速に進化しています。

定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)という手法により、多方向からがん病巣を精確に狙い撃ちすることも可能となり、数ミリのがんにおいては、正常組織への影響を最小限に抑えながら、数日で完治させることさえできるようになりました。有害事象が少ないため、通院で治療ができることも患者さまの負担軽減につながっています。

根治から緩和まで

がんに罹患された患者さまで放射線治療を受ける割合は、欧米の60%程度に対し、わが国では30%程度に過ぎないといわれています。これは罹患するがんの種類の差にもよりますが、適応に関する認識の差も大きいと考えられます。

根治目的の放射線治療はもちろん、緩和医療においても放射線治療は様々な場面で有用性があります。骨転移による疼痛緩和では、1~数回の照射でも70%程度の奏効率があるといわれています。全身状態にあまり影響を与えることなく、がんによる疼痛や圧迫症状、出血などの局所症状を緩和することも可能です。根治的治療においても早期より緩和ケアを導入することにより生存期間が延長するという報告もあります。

主役から裏方まで広い役割を果たすことができるのが、放射線療法の特徴です。