子宮頸がん

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疫学

子宮頸部(子宮の入口の部分)の上皮から発生するがんです。
死亡率は10万人当たり4.2人です。罹患率、死亡率とも30歳代前半から上昇し30歳代後半がピークになります。

病因

性感染症の一種であるパピローマウイルスの作用で発症します。性交渉を開始する前の女子中学生にパピローマウイルスのワクチンを接種することによって発症が大幅に抑制されますが、性交渉開始後の成人にパピローマウイルスワクチンを接種しても子宮頸がんによる死亡率が低下するかどうか不詳で、成人の方は子宮頸がん検診を定期的に受けることが推奨されています。

症状

早期の場合、症状は現れません。進行すると不正性器出血や下腹痛が起こることがります。

診断

子宮がん検診とは通常、子宮頸がん検診を意味します。市民健診や人間ドックや産婦人科開業医などで子宮頸部の細胞をこすって採取し顕微鏡で見て異常な細胞がないかどうか調べます(子宮頸部細胞診)。細胞診で異常があるときは通常、病院へ紹介されますが、子宮頸部に悪性の病変があるかどうか調べるために細胞の塊(組織)をとって検査します(生検)。

進行期

I期 がんが子宮頸部に限局するもので、IA1期からIB3期に細分類される。
IA1期 子宮頸部の上皮から発生したがんが筋肉の部分(間質)に入りこむ(浸潤)深さが3mm以下のもの。
IA2期 間質浸潤の深さが3mmを超えるが5mm以下のもの。
IB1期 IA期を超え、腫瘍最大径が2cm以下のもの。
IB2期 IA期を超え、腫瘍最大径が2cmを超えるが4cm以下のもの。
IB3期 IA期を超え、腫瘍最大径が4cmを超えるもの。
II期 がんが子宮頸部を超えて広がっているが、まだ骨盤壁または腟壁下1/3には達していないもので、IIA1期からIIB期に細分類される。
IIA1期 腟壁浸潤が認められるが、子宮傍組織浸潤は認められず、腫瘍最大径が4cm以下のもの。
IIA2期 腟壁浸潤が認められるが、子宮傍組織浸潤は認められず、腫瘍最大径が4cmを超えるもの。
IIB期 子宮傍組織浸潤の認められるもの。
III期 がん浸潤が骨盤壁に達するもの、または腟壁浸潤が下1/3に達するもので、IIIA期からIIIC期に細分類される
IIA期 腟壁浸潤は下1/3に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁にまでは達していないもの。
IIIB期 子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまでは達しているもの。
IIIC期 リンパ節に転移が認められるもの。
IV期 がんが小骨盤腔を超えて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵すもので、IVA期とIVB期に細分類される。
IVA期 膀胱、直腸の粘膜への浸潤があるもの。
IVB期 小骨盤腔を超えて広がるもの。

治療

IA1期は単純子宮全摘術(子宮のみとる)か子宮頸部円錐切除術(子宮全体をとるのではなく頸部の病巣がある部分のみ切りとる)をします。

IA2期からIB2期は広汎子宮全摘術(子宮とともに周囲の靭帯やリンパ節も広くとる)をします。手術後にがんが他の部位へ転移したり再発する危険性が高い場合は、術後化学療法(抗がん剤の点滴)をすることがあります。

II期は従来から広汎子宮全摘術の適応とされてきましたが、放射線治療(子宮を中心に放射線をあてる)を中心とした治療をする方が広汎子宮全摘術をするより副作用が少なく、広汎子宮全摘術をした場合と手術はせず放射線治療を中心に治療した場合とで予後は同等であることが分かってきているため、最近は手術より放射線を主治療にすることが多くなってきています。

III期とIVA期は手術は不能で、放射線を主治療とし、必要に応じて化学療法も併用します。

IVB期は遠隔転移があるため、積極的な治療をするなら化学療法が原則です。当院は低侵襲な腹腔鏡での子宮悪性腫瘍手術をする施設の基準を満たしていないため、手術するときは下腹部から臍の上までお腹を大きめに開ける開腹手術をする必要があります。広汎子宮全摘術を腹腔鏡でした場合と開腹でした場合の予後を比較すると、海外では腹腔鏡の方ががんの再発率がやや高いというデータが出ていますが、日本では腹腔鏡群と開腹群で予後の差は確認されていません。腹腔鏡下広汎子宮全摘術は子宮傍組織浸潤がある場合などは適応外になります。

放射線を主治療にする場合、体の外からあてる外照射と、腟から放射線源を入れて子宮頸部に強力にあてる腔内照射があり、両者を併用することによって治療効果が高まりIII期やIVA期の進行がんでも完治することがあります。当院では外照射はできますが、腔内照射はできません。

腹腔鏡下広汎子宮全摘術や腔内照射を希望される場合は高次施設に紹介します。