誤嚥性肺炎

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概要

肺炎は悪性新生物(がん)、心疾患についで日本人の死因の第3位です。ここでは、特に高齢者で多い誤嚥性肺炎について説明します。まず、誤嚥とは食べ物や唾液が気管内に入ってしまうことで、そのために発症する肺炎のことを誤嚥性肺炎と呼びます。高齢者の肺炎の大半を占めています。

原因

誤嚥が原因です。誤嚥は嚥下機能(飲み込む力)の低下によって起こります。嚥下機能の低下は高齢者で特に寝たきりの方や認知症、神経変性疾患(パーキンソン病など)、脳梗塞の既往をもつ方に多く見られます。誤嚥をすることによって口腔内の細菌によって肺炎がおこるとされています。

また、一般的には誤嚥をするとむせが生じますが、高齢者ではむせが生じず、ご本人や周囲の人が誤嚥したことに気が付かないこともあります(不顕性誤嚥)。

症状

熱や咳、痰、呼吸苦などが主な症状です。高齢者では重篤にならないと症状が出にくいこともあり注意が必要です。

検査

肺炎に対しては抗生剤治療を行います。抗生剤の治療期間は病状に大きく左右されますが1-2週間が一般的です。また肺炎の改善とともに嚥下機能を評価します。嚥下内視鏡検査(VE)といって内視鏡をのどに導入し、食べ物を飲み込む様子を確認し嚥下機能を評価する検査を行うこともあります。さらに口腔内の細菌によって肺炎を起こすため、口腔内のケアをしっかりと行います。

嚥下機能によって食事の形態を検討しますが、食事を摂ることができないほど嚥下機能が落ちている場合は栄養をどのように摂取していくか、多職種で検討します。具体的には胃瘻や中心静脈栄養(体表の太い血管に太いカテーテルを挿入する)、末梢静脈栄養などが一般的です。

治療

血液検査や画像検査(CTやレントゲン)を行います。血液検査では白血球やCRPといった炎症反応の上昇がみられますが、高齢者では白血球の上昇が軽微なこともあります。画像検査では下肺野、背側に浸潤影(肺炎の影)を認めることが多いとされています。また、培養検査といって喀痰の中にどのような細菌がいるか確認する検査があります。口腔内の細菌で肺炎を引き起こすことが多いとされますので口腔内の細菌がよく確認されます。

リハビリテーション

目的:嚥下機能向上廃用症候群の予防誤嚥性肺炎の再発防止

目標:誤嚥の大きな原因の一つに嚥下機能の低下や咀嚼力の低下などがあります。それらを早期に評価し、出来るだけ口から安全に食事できる環境を医師や看護師、栄養士とともにチームの一員として患者さまをささえます。嚥下機能の低下は言語聴覚士、肺炎による身体機能や日常生活活動の低下は理学療法士や作業療法士が介入し患者さまの早期回復へ繋げていきます。

その他

誤嚥性肺炎は高齢者に多く、病気そのものだけでなく患者さまを全体として診る必要があります。誤嚥性肺炎の再発予防も重要ですが生活背景、社会背景を考慮しチームで支えること、またその人らしさを尊重することも大切です。ご家族や地域とのかかわりも重要になってきます。