乳がん
症状
乳房のしこり、乳頭からの異常乳汁分泌や変形、皮膚のひきつれがありましたら、乳腺外科外来を受診してください。
乳房は表面から見えたり触れる部位ですので、月1回の自己検診も重要です。閉経前の方は、生理後、10日~2週間を目安に乳房の張りが収まった時点で、入浴時に鏡で全体を見て、せっけんなどを手に付けて滑りよくして触ってみてください。
閉経後の方は月に1回、日を決めて自己検診を行って下さい。
診断の流れ
乳腺外科外来受診後は、一般的な病変部(乳房のしこり)の診断は以下の手順となります。
- 診察(視触診、問診)
- 画像診断:マンモグラフィ、乳腺超音波(エコー)
- 生検:病変部位の細胞を採取し顕微鏡による診断(病理診断)による良性か悪性(乳がん)かの診断をする方法
検査方法
診察(視触診、問診)
上記の症状の有無を診察時に行います。乳がんは、生活習慣や家族歴も重要ですので、書面や口頭でお聞きします。
画像診断
マンモグラフィ:乳房を挟んでレントゲン撮影する検査です。痛みを伴うことがありますが、乳がん健診や病院の精査において最も基本的な検査ですので必ず受けてください。できれば、撮影機械、撮影する技師そして診断をつける医師のそれぞれが公的な認定を取得しているクリニック、病院や健診施設で受けてください。
当院では、通常のマンモグラフィ撮影(2D)に加えて、より精査が可能なトモシンセシス(3D)マンモグラフィ撮影も行っています。
乳腺超音波(エコー):乳房にゼリーをつけて検査する方法で通常は痛みは特に伴いません。特別な場合以外は単独で行うことはありません。基本的にはマンモグラフィと合わせて精査します。
生検
画像診断上乳房腫瘍と診断した場合には、細胞を採取(生検)し、顕微鏡診断(病理診断)を行い良性か悪性(乳がん)かを診断します。特に乳がんを疑う場合は必ず行います。
生検の細胞採取量で以下に分けられます。
- 細胞診:通常の点滴や注射器の細い針で吸引をかけながら細胞を穿刺したり、乳頭からの乳汁がある場合はそれを採取し病理診断を行います。
- 組織診:さらに大きな針で、ばね式の器具(コア ニードル バイオプシ)*や吸引式の器械(マンモトーム)**を使って、局所麻酔(病変部位のみの麻酔)を使い外来で行います。
- 外科生検:乳房腫瘍そのものを診断のため局所麻酔下で摘出します。がんと診断された場合は追加の手術が必要となります。ほとんどは外科生検前に針生検で診断されます。
- *外来の診察室で行います。原則は水曜日の午後に担当医が行います。
- **当院では通院により手術室で行います。吸引することにより小さな傷(5㎜程度)で多くの細胞を採取できます。
顕微鏡による診断(病理診断)
腫瘍が良性であるか悪性であるかは顕微鏡によりその腫瘍を作っている細胞が悪性かどうかで診断されます。当院では、病理診断専門医が診断しています。
組織診では悪性診断だけでなく、その乳がんに効果がある抗がん剤や再発のリスクなどを病理診断で予測し、手術、抗がん剤や放射線治療に関する治療方針を決定します。再発した場合は生検が可能である部位では再生検を行い病理診断を行います。
病期分類(ステージ分類)
乳がん診断後に内蔵などの転移の診断の精査を行い腫瘍サイズ、腋窩(わき)リンパ節転移の有無、内臓や骨の転移の有無により5段階(01 2 3 4 )に病期分類をします。
0 と1は早期乳がんとされています。
治療の流れ
乳がん治療は、①手術、②抗がん剤と③放射線治療と組み合わせです。それらすべてを行うか、どのタイミングで行うかは個々の乳がんの進行度や性質で異なります。
手術前に抗がん剤治療を行ったり、進行、再発の場合は手術を行わず抗がん剤の治療のみを行う事もあります。
ただ、手術のみで治療が終了することはほとんどなく、抗がん剤はほぼすべてに併用します。抗がん剤は、非常に多くの種類があり、効果と副作用のバランスを考慮して決定します。副作用の少ない抗がん剤のみで治療が可能な場合もあります。放射線治療は手術を行う場合は手術後に行い、進行再発の場合は再発時や、その再発部位により考慮します。
手術
乳がん根治手術
- 乳房における手術:乳房部分切除あるいは乳房全摘術
- 腋窩リンパ節に対する手術:センチネルリンパ節生検*あるいは腋窩リンパ節郭清術**
- *腋窩リンパ節郭清術による術後腕の腫れを避ける目的として、郭清術となる症例をできるだけ絞り込むための術式。手術中に腋窩リンパ節の一部を摘出し、転移の有無について病理診断を行いリンパ節の切除範囲を決定する。
- **腋窩リンパ節に転移があると診断された場合に解剖学的に決められた範囲のリンパ節をすべて取りきる手術。術後手術した腕が腫れる場合が多い。
再建術
乳がん根治手術に加えて乳房の形を整えることを目的とする手術です。乳がん手術と同時に行う場合や時間をあけて行う方法があります。また、再建の材料として人工乳房を使用する場合やご自身の体の一部を使用すること(自家組織)もあり、当院では乳房再建専門の形成外科専門医が再建術希望の患者さまと相談し適切な手術を行います。
抗がん剤
乳がんは他のがんに比較して非常に多くの抗がん剤があります。当院では乳腺外科だけでなく、腫瘍内科(抗がん剤専門内科)や薬剤部など関係のある部署とも相談し患者さまにあった薬剤選択を行います。抗がん剤開始前には効果、副作用について主治医やがん薬物専門薬剤師からの説明があります。
放射線治療
乳がん手術後や不幸にして乳がんが再発した場合に行います。手術後は手術の内容で放射線治療を行うかを決定し通常は通院で行います。再発の際はその部位や症状により放射線治療の効果がもっとも望めるタイミングで行います。当院では放射線治療専門医により、治療前に治療内容や合併症について説明し患者さまの体へ負担の少ない方法で行っています。
術後合併症
手術後に上肢(腕)が腫れたり、上げにくくなったりすることがあります。当院では、入院や通院中に必要な場合にはリハビリテーション科の乳がん担当理学療法士(女性)がご自宅でもご自身でケアができるように指導しています。
緩和治療
乳がんは80%以上が治癒可能ながんですが、不幸なことに病状が初診時にすでに進行していたり、治療後に再発する場合があります。がんの治療ができる限りは抗がん剤治療を行いますが、それと並行してがんによる痛みなどへの治療を行います。それは緩和治療とされ、普通に外来通院されている方にも行っています。
さらに、がんが進行し治療が困難となり緩和治療が主となった場合は、緩和治療専門のスタッフによるサポートがあります。当院では緩和ケア病棟がありますが、入院・外来の区別なく必要な時には緩和治療専門スタッフに相談が可能です。