消化器内科

メッセージ

鎌田 和浩部長 鎌田 和浩(かまだ かずひろ)

「消化器内科の入院患者さまは6割以上の方が緊急で入院されてきます。消化器内科では、24時間、365日、フットワーク軽く救急対応できる体制を備えています。医療のプロフェッショナルとして診療に全力を尽くすことは当然ですが、医療者側の自己満足に終わってしまってはいけません。

患者さまに満足していただけなければプロフェッショナルとしては失格です。われわれ消化器内科のバックには、看護師さんをはじめとして種々の専門性を持ったメディカルスタッフやいつでもベストの状態で検査・治療ができるように機器のメンテナンスや準備をしてくれるクラークさんがいます。

日々の診療の中で消化器内科を支えてくれるチーム力に感謝し、そして、このパワーこそが患者さまの満足度につながると思っています。

消化器内科の特色・強み

消化器内科では、食道から胃、十二指腸、小腸、大腸といった「食事が消化されて便になるまでの通り道」に加えて、消化液をつくったり、吸収した栄養をたくわえたりする役割を持つ肝臓、胆のう、膵臓を合わせた多くの臓器を担当しています。

診察には、日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会などの認定医、専門医、指導医の資格を持つ専門医師を中心に診療を行っています。クリティカルパスを導入し、効率的で質の高い医療の提供にも努力しています。

消化器では下記のような病気が主になり、その他にも幅広く対応しています。

消化器内科で扱うがんについて

消化器系の病気の検査では、上部内視鏡検査(胃カメラ)、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)、腹部超音波検査、腹部CT、MRI検査など疾患や症状に応じて必要な検査を行っています。胃がんや大腸がんなどは内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)で診断しています。上部内視鏡検査では、胃カメラが苦手な方や苦痛を軽減するために、鎮静剤を使った内視鏡検査や細い内視鏡経で鼻を通す経鼻内視鏡検査も選択することができます。

大腸内視鏡検査では、炭酸ガス送気装置を導入しており、空気に比べて検査後の腹部の膨満感が軽減され安全で安楽な検査が受けていただけます。また、小腸・大腸カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡を常設しており、小腸病変に対する診断や内視鏡治療が可能です。

当科の治療方針

消化管の疾患

食道・胃・大腸などのポリープ、早期がん

食道、胃および大腸のポリープや早期がんで内視鏡治療の適応があれば、積極的に切除(内視鏡的粘膜下層剥離術など)を行っています。また、内視鏡的止血術、胃瘻造設術、異物除去術も行っています。

食道がん、胃がんでは内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が治療の一般的な方法です。ESD(図3)は、がんの周囲に印(マーキング)を付けます。がんの下部の粘膜下層にヒアルロン酸や生理食塩水を注入しがんを浮き上がらせ、周辺を切開します。

切開した部位からがんの下部の粘膜下層を剥いで行き、病変全体を切除します。がんを切除してできたきずあと(潰瘍)にある血管の止血処置を行います。切除病変を回収し、病理医が顕微鏡で診断(病理診断)を行います。

大腸がんは多くの場合内視鏡的粘膜切除術(EMR)を行います。EMR(図4)は、がんの下部の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸を注入しがんを浮き上がらせます。がんの周囲をスネアと呼ばれる円形状のワイアで締め、スネアに通電し切除します。

切除病変を回収し、病理医が顕微鏡で診断(病理診断)を行います。病変によっては内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)も行います。大腸の場合一般的にはマーキングは行いません。

切除した病変の病理診断で、内視鏡治療だけで十分であった(治癒切除)かどうかの判定を行います。病理診断の結果追加治療が必要となる場合もあります。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜に炎症が起き、粘膜がはがれたり(潰瘍)、ただれたり(びらん)しています。このため、お腹が痛くなったり、頻繁に下痢をしたり、ときには粘膜から出血して血便が見られます。通常、外敵から身体を防御するために働く免疫系が、なんらかの異常により自分自身の腸管粘膜を攻撃するために潰瘍性大腸炎が起きると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。男女の数に差はなく、20~30歳代での発症が多いですが、中には小児や高齢で発症することがあります。日本には約20万人の患者さまがいると言われており、年々増え続けています。

炎症性腸疾患の詳細はこちら

「潰瘍性大腸炎」の診断、検査

潰瘍性大腸炎は、細菌やウイルスによる感染性腸炎と見分けがつきにくいことがしばしばあります。潰瘍性大腸炎と感染性腸炎とでは治療がまったく異なるため、最初の診断には細心の注意が必要です。また、治療を開始した後に、症状をきちんと把握するために、血液検査、便検査、画像検査を定期的に行います。

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健康な人の大腸

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潰瘍性大腸炎の大腸

血液検査 おもに血球の数(白血球数)と炎症の指標(CRP)を確認します。検査値の変化は、病気の経過をみるのにとても重要です。
便検査 便の中に感染症を起こすような細菌がいないかどうか、また腸炎の程度を反映する血液成分(便潜血)、炎症反応の物質(便中カルプロテクチン)を調べることがあります。
画像検査 大腸の状態をより詳しく見るために、主に大腸内視鏡検査が行われます。炎症の範囲や粘膜の潰瘍やびらんの状態を観察し、その後の治療法を決める重要な検査です。
「潰瘍性大腸炎」の治療

5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤を基本とし、より強い炎症がある場合には、ステロイド製剤、その他免疫調節薬、生物学的製剤、血球成分除去療法など様々な薬剤を用います。当院の消化器内科では、これらの治療を組み合わせて、患者さまそれぞれに合った治療取り組んでいます。

「潰瘍性大腸炎」の取り組み

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)に対しては一般的な内科的治療(5-ASA、ステロイド、免疫調整薬など)のほかに、抗TNFα抗体薬などの生物学的製剤や腎不全科と共同で血球成分除去療法も行っています。多職種(看護師、薬剤師、栄養士など)から構成されるIBD(炎症性腸疾患)チームが診療をサポートします。

病気の検査や治療を担当する医師だけでなく、食事のことは管理栄養士、薬のことは薬剤師、金銭的負担のことは医事課、メンタルケアは臨床心理士、といったように、ひとりの患者さまをチームでサポートし、安心して治療を受けられるように心がけています。

ヘリコバクター・ピロリ菌感染症

ヘリコバクター・ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍の原因となるだけでなく胃がんのリスク因子と考えられています。当院ではピロリ菌に対して積極的に除菌治療を行っています。通常の保険診療(1次除菌・2次除菌)で除菌できない患者さまには、必要に応じて3次除菌(保険適用外)を行っています。

また、消化管がんで内視鏡的切除や外科的手術の適応がない症例では化学療法(抗がん剤療法)を行っています。外来化学療法室を完備しており、可能な限り外来で治療を施行しています。食道がんに対しては放射線併用化学療法も積極的に行っています。

肝臓の疾患

ウイルス性肝炎(B型肝炎・C型肝炎)

必要に応じて経皮的肝生検術(2日間の入院)を施行し、組織学的診断を行っています。B型やC型慢性肝炎は治療ガイドラインに基づいてインターフェロン、核酸アナログ製剤などの最新の抗ウイルス療法を行っています。また、抗ウイルス療法を行わない場合は、他の治療によって疾患の改善ならびに進行阻止に努めています。これらは、かかりつけ医の先生方とも協力して行っています。

B型肝炎に対しては核酸アナログ剤を使用し、肝機能の温存・長期生存を達成しています。

C型肝炎に対する治療法の進歩は目覚ましく、ウイルスの増殖を直接抑制する薬剤(DAA:Direct-Acting-Antivirals)が開発・認可されました。現在では、C型肝炎のすべてのgenotypeに対して、リバビリンなどの他剤を併用することなく、治療が可能になっています。治療期間は8~12週で、入院することなく外来通院で行っています。

新規のDAA治療では副作用は格段に少なくなり、C型肝炎ウイルス排除率は100%に近づくことが期待され、従来は適応外だった腎障害例にも使用可能となっています。

肝硬変

慢性肝炎や肝硬変例については、定期的に腹部超音波検査(エコー)、CT、MRIなどの検査を施行し、肝がんの早期発見に努めています。原発性肝がんに対しては診療ガイドラインに基づいて経皮的局所療法(ラジオ波焼灼療法、エタノール注入)、肝動脈塞栓療法、外科的切除術、全身化学療法を行っています。

2007年より患者さま向けに年2回肝臓病教室を開催しています。(予定につきましてはコチラをご参照ください)

肝臓がん

膵臓の疾患

膵臓がん・膵臓の疾患

膵臓の疾患については、エコー、CT、MRI等の画像検査、内視鏡的膵管造影検査、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)、血管造影などで診断し、膵がんなどの病態に応じて化学療法や外科的手術、放射線治療を行っています。

膵臓がんの詳細はこちら

認定施設

  • 日本内科学会認定内科専門医教育病院
  • 日本消化器病学会認定医制度認定施設
  • 日本消化器内視鏡学会認定指導施設
  • 日本臨床腫瘍学会認定研修施設
  • 日本肝臓学会認定施設
  • 日本消化管学会胃腸科指導施設
  • 日本がん治療認定医機構認定研修施設

医師一覧

部長鎌田 和浩(かまだ かずひろ)

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医・学会評議員
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医・社団評議員
  • 日本消化管学会胃腸科専門医・指導医
  • 日本肝臓学会肝臓専門医
  • 日本カプセル内視鏡学会カプセル内視鏡認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
専門領域
  • 消化器内視鏡治療
  • 胆膵疾患

肝臓内科部長長尾 泰孝(ながお やすゆき)

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医・学会評議員・支部評議員
  • 日本消化器内視鏡学会内視鏡専門医
  • 日本肝臓学会肝臓専門医・指導医・西部会評議員
専門領域
  • 肝臓

肝臓内科部長世古口 悟(せこぐち さとる)

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医・学会評議員
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
  • 日本肝臓学会肝臓専門医・指導医・西部会評議員
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
  • 日本超音波医学会超音波専門医
  • 日本医師会認定産業医
専門領域
  • 消化器
  • 肝臓

副部長山田 展久(やまだ のぶひさ)

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医・指導医・支部評議員
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医・支部評議員
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
専門領域
  • 消化器内視鏡治療

医長東 祐圭(あずま ゆか)

資格
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会内視鏡専門医
専門領域
  • 消化管疾患

医員濵田 聖子(はまだ せいこ)

資格
  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
専門領域
  • 消化器内科

医員池田 佳奈美(いけだ かなみ)

資格
  • 日本内科学会認定内科専門医
  • 日本消化器病学会消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
  • 日本肝臓学会専門医
専門領域
  • 消化器内科

医員廣瀨 瞳(ひろせ ひとみ)

資格
  • 日本内科学会認定内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
専門領域
  • 消化器内科一般

専攻医白井 鈴華(しらい すずか)

専門領域
  • 消化器内科

専攻医田中 大輝(たなか だいき)

専門領域
  • 消化器内科

専攻医山下 裕暉(やました ゆうき)

専攻医小澤 礼生(おざわ れお)

専門領域
  • 消化器内科

診療実績

2023年度

外来患者数
72人/日
外来紹介件数
174件/月
入院患者数
29.6人/日
平均在院日数
8.9日

検査・治療件数

内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)食道
9件
内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ESD)胃
41件
食道静脈瘤の内視鏡治療
16件
内視鏡的大腸ポリープ切除術
768件
内視鏡的逆行性膵胆管造影検査及び治療
191件
超音波内視鏡検査及び治療
129件

研究

学会(2023年)