外科・消化器外科
メッセージ
外科の特色・強み
当科では、胃がんや大腸がん、肝がん、肺がん、乳がんなど幅広いがんを取り扱います。その中で乳がんは、乳腺外科、肺がんは呼吸器外科が専門で取り扱っています。
総合的に質の高いがん診療を提供するために『がん診療センター』を設立し、複数の診療科、職種、部署が総力をあげて「がん」に取り組んでいきます。
そのほか、胆石症やヘルニアなどの手術・治療も手掛けております。また当院は、日本外科学会、日本消化器外科学会、日本胃がん学会、日本肝臓学会、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本乳がん学会の認定施設に指定されており、これらの領域の指導医、専門医の資格を持った医師たちが、日夜診療に従事しています。
その他、日本癌治療学会、日本内視鏡外科学会、日本消化器病学会、日本食道学会、日本臨床外科学会、大腸癌研究会、日本大腸肛門病学会、日本肝胆膵外科学会など多数の学会に参加し、たえず最新の知識で治療ができるように心がけています。
当科の治療方針
がんについて
当院では、大阪府がん診療拠点病院としてがん診療に力を入れています。地域におけるがん医療をしっかりと担うために、がん診療センターを設立し院内組織機構の中に体制づけています。センター設立により、各部署とより連携を強くして、「質の高いがん診断・がん治療」を提供していきます。
がんの進行度に応じて、がんの診療ガイドラインに則した合理的な治療・手術を行います。患者さまの身体に負担の少ない鏡視下手術(腹鏡鏡手術、胸腔鏡手術)を行っており、根治性(がんの原因元を根本的に治療する)を損なうことなく、生活の質を重視した低侵襲手術(身体に負担の少ない手術)を患者さまの状態に応じて適切に実施します。
一方、高度に進行したがんには、最新のエビデンス(効果があることを示す証拠や検証結果・臨床結果)に沿った手術や化学療法、放射線療法など複数の治療方法を駆使して根治的手術をめざします。また、消化器内科、放射線科と連携し集学的治療を行っています。
がん治療におけるQOL(Quality of life:生活の質)の重視
根治性を損なうことなく、患者さまの術後のQOLの向上に重点を置いた治療に努めています。すなわち、臓器機能の温存を追求することはもとより、低侵襲治療としての腹腔鏡下手術を積極的に取り入れております。また、術後の再発や切除不能症例に対する抗がん剤治療は、外来にて行うよう努めています。
オーダーメイドがん治療
ガイドラインに沿った標準的治療を基本とし、十分なインフォームド・コンセント(説明と同意)の上、患者さまの意思を尊重し、オーダーメイドで各人の病態、進行度に応じたメニューによる治療法を提示し選択していただけるように考えています。また、セカンドオピニオンを希望される場合にも、積極的にお手伝いできるようにしています。
医療の質の向上(クリニカルパス)
医療の質の向上をはかり、患者さまを中心としたチーム医療を推進するために、クリニカルパスを導入し、短期間の入院治療で不要な投薬や検査を排除した効率的で内容の濃い治療を行っています。また、退院後は地域連携パスを利用し、地域の先生方と綿密に連携を取って、患者さまの術後フォローを行います。
『キャンサーボード』にて治療方針を決定しています。
当院では毎週1回(月曜日)16:45から下記専門領域より一同に会し、キャンサーボードを開催いたしております。それぞれが専門的意見を出し合って治療法を集約していくため、患者さまそれぞれの症状・状態に応じた最適な治療法を決定できることが最大の特徴です。
消化器外科・一般外科
消化器外科の分野においては各臓器の手術技術の進歩はめざましく、当院においても、上部消化管を扱う食道・胃外科、下部消化管を扱う大腸・肛門外科、および肝胆膵外科に分けて、それぞれの分野のエキスパート(日本内視鏡外科学会技術認定医、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医)が手術、診療を担当しています。胃がん、大腸がんに対しては低侵襲な腹腔鏡下手術が基本です。消化器がん領域における化学療法の進歩も近年めざましいものがあり、手術だけでは根治がむずかしい進行がんに対しては、術前・術後の化学療法を駆使してその治療成績を向上させるよう努めています。
食道・胃外科
食道・胃外科では日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)、食道科認定医の執刀・指導の下、鏡視下手術や困難症例手術も積極的に行っております。また、消化器内科、放射線科と連携し集学的治療も行っております。
胃がん
進行度に応じた合理的な手術を行っています。2020年の胃がん症例のうち75%を腹腔鏡手術で施行しています。腹腔鏡下幽門側胃切除(LDG)だけでなく腹腔鏡下胃全摘(LTG)/噴門側胃切除(LPG)や食道胃接合部がんなどの難易度の高い症例に対しても適応を広げております。
従来からの進行がんに対する術後補助化学療法に加えて、高度リンパ節転移症例や他臓器浸潤が疑われる症例に関しては術前補助化学療法を行った後に手術を行い、良好な治療成績をあげております。さらに、遠隔転移を認めるStageIV症例であっても抗がん剤が著効し、遠隔転移が消失した症例に対しては遺残している腫瘍を完全切除するConversion手術を行い、長期生存を目指します。
手術支援ロボットダヴィンチによる手術も行っています。
胃 GIST
小さなGISTに対しては、腹腔鏡下胃部分切除にて胃の臓器機能を可及的に温存した手術を行っています。噴門や幽門近傍のGISTには腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS:Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)を行い、胃切除を行うことなくGISTの切除を可能としています。腫瘍径が10㎝を超えるような症例や他臓器合併切除が必要な症例には術前イマチニブ療法を行い、腫瘍を縮小させてからの手術を行います。
食道がん
腫瘍の進行度や患者さまの全身状態や基礎疾患に応じて、胸腔鏡手術・縦隔鏡手術・開胸手術の中から最良の方法で食道切除・再建を行っております。またガイドラインに準じてStageII-III食道がんに対しては術前化学療法を施行し、高リスク症例や再発症例などには放射線化学療法施行するなど、集学的治療を行っています。
食道がんの深達度
大腸・肛門外科
日本大腸肛門病学会の認定施設であり、日本大腸肛門病学会指導医・評議員、日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員の資格を持った大腸外科専門医が中心となって大腸・肛門疾患の外科治療に取り組んでいます。
大腸がん
近年増加傾向にあり、年間100例近い症例に対して手術を行っています。現在は約90%の症例で腹腔鏡手術を導入し、できるだけ低侵襲な治療を行えるよう努めています。直腸がんに対しても多くの症例を腹腔鏡下に行い、肛門や膀胱機能ができるだけ温存できるように放射線治療や化学療法を組み合わせた集学的治療を行ったり、括約筋間直腸切除術などの肛門温存手術に取り組んで治療成績の向上に努めています。大腸がんに対する手術は手術支援ロボットダヴィンチによる手術も可能です。
肝転移、肺転移に対しては積極的に切除を行います。大腸がんに対する抗がん剤治療はめざましく進歩しており、切除不能と考えられた大腸がんに対しても、化学療法が成功した場合、根治を目指した手術(conversion surgery)を積極的に行っています。
炎症性腸疾患
近年増加傾向にある炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)であり、大腸全摘術などのこの領域の高難度手術にも豊富な経験をもとに腹腔鏡を用いた低侵襲手術に取り組んでいます。
虫垂炎
大腸の入り口にある盲腸に、虫垂という5~10㎝程度の突起物があり、ここが異物や糞石などが原因で閉塞し、炎症をおこす病気を急性虫垂炎といいます。『盲腸』という呼び名で広く認知されています。2、3歳くらいの幼児期から小中学生、20代くらいまでの発症率が高いですが、高齢者を含め男女問わずどの世代でも見られます。右下腹部の痛みでよく知られ、小さな子供の場合は食欲減退、嘔吐などがきっかけで判明することもあります。強い炎症を伴う虫垂炎に対しては抗生剤治療で一旦炎症を落ち着かせてから数か月後に、待機的(計画的)な虫垂切除を行うようにしています。これにより腹腔鏡下での切除率の向上や広範囲での切除を避けられるなどのメリットがあるとされています。
内痔核
直腸、肛門部の静脈叢がうっ血し、いぼ状のしこりができるものです。排便時の痛みや出血、進行すると肛門から脱出(脱肛)します。うっ血の原因は下痢や便秘、妊娠出産、長時間の立ちっぱなし、座りっぱなしなどです。ALTA療法という硬化剤を注射して切らずに治す痔の治療を導入しており、術後早期の退院が可能です。
便失禁
自分の意志に反して、便がもれる症状です。一番大きな原因は、肛門括約筋の機能が低下することですが、肛門のしまりに異常がなくても漏れてしまうこともあります。高齢になるほど発症率は上昇します。仙骨神経刺激療法という電極を仙骨に埋め込んで、その刺激で便失禁を治療する手術療法を導入して治療にあたっています。
肝胆膵外科
日本肝臓学会、日本胆道学会、日本膵臓学会の認定施設で、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医のもと高難度な手術を積極的に行っています。
肝がん
肝切除は安全に施行できるようになり、肝硬変合併肝がんや転移性肝がんに対して積極的に切除を行っています。高齢者や再肝切除の場合でも全身状態などが良好であれば切除を行います。原発性肝がんは肝予備能を考慮し過不足のない切除を行います(部分切除から葉切除以上まで)。内科的治療(TACEやラジオ波)後の再発症例なども積極的に切除します。
転移性肝がんは複数病変の場合でも切除可能であれば切除を行い、また、はじめは切除不可能であっても全身化学療法などによって縮小すれば切除をします。一部の肝切除で腹腔鏡下肝切除を行っています。
胆道がん
胆道がんに関しては、部位により膵頭十二指腸切除や肝葉切除・胆道切除再建や拡大胆嚢摘出術などを行います。ほとんどが黄疸で発症しますので、消化器内科と綿密な連携のもと迅速に対応いたします。
膵がん
切除例が徐々に増加しています。早期発見症例が増加したためと考えられます。術前補助化学療法→手術→術後補助化学療法を基本としています。切除不能膵がんは全身化学療法(+放射線療法)を施行しますが、奏効した患者さまには慎重に適応を判断し、切除することがあります。膵がん早期発見プロジェクトを立ち上げ、膵がんの高リスク患者さま(糖尿病の悪化や新規発症、膵嚢胞性疾患、膵がんの家族歴など)に対して、積極的に検査介入し早期発見に努めています。
胆石症・胆のう炎
胆石とは胆のうや胆管に石(結石)ができることで、痛みをはじめとする様々な症状のことを胆石症と呼びます。胆のうにできる胆のう結石、消化液の胆汁が通る胆管でできる総胆管結石、肝臓の内の胆管にできる肝内胆管結石)と石ができる場所によって3種類に分けられます。腹腔鏡下手術で行います。急性胆嚢炎は適応に応じて、早期腹腔鏡下胆嚢摘出術(発症数日以内)を行います。経皮経肝胆嚢ドレナージを施行した場合は、ドレナージ施行後2週間以内に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行い、安全と低侵襲を確保しつつ入院期間短縮に努めています。
一般外科
ヘルニア
ヘルニアとういのは、体内のある臓器が本来あるべき位置からはみ出してしまった状態のことをいいます。脱腸やでべそもヘルニアの一種です。緊張がかからず、かつ再発が少ないメッシュを用いた修復術を行います。第一選択として腹腔鏡下でヘルニア修復術を行っています。
乳腺外科
当院では、乳がん診療専門の医師、看護師、薬剤師、技師、理学療法士がチームで医療を行っています。また、乳房再建術も行っており、がん根治手術と同時に行う一時再建だけでなく、時間が経過してから行う二次再建にも対応しています。
乳がん
わが国では乳がんになる方が年々増加しています。最近の標準的な手術は乳房温存術(部分切除)とセンチネルリンパ節生検(腋窩のリンパ節切除の合理的縮小)となっておりますが、乳房切除術(全切除)後の再建術(人工乳房など)の保険適応が拡大され、手術方法の選択枝が多くなってきております。個々の患者さまの病状、ご希望を考慮し十分ご相談の上、手術、抗がん剤や放射線治療を組み合わせて治療を行っています。
遺伝子検査
乳がんの5~10%は、家族性乳がんとされています。2013年5月にマスコミで取り上げられ、米女優アンジェリーナ・ジョリーさんが告白された家族性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)もその一つです。当院でも家族性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の遺伝子検査が可能になりました。
呼吸器外科
進行肺がんや様々な合併症のある症例に対しても、リスクを提示し手術を希望されれば積極的に行う方針です。
肺がん
原発性肺がんに対しては、根治性の高い手術を可能な限り低侵襲で行えるように努力しています。I期症例においては完全胸腔鏡下手術を行っています。II期以上の手術適応例については、根治性を重視し従来の開胸手術を行い、治療効果を上げています。術後の補助療法(化学療法、放射線療法)は、進行がんを中心に積極的に行っています。転移性肺がんに対して切除可能で残存肺機能が問題なければ切除を行います。胸腔鏡下に切除を行っています。
認定施設
- 日本外科学会外科専門医制度修練施設
- 日本消化器外科学会専門医制度専門医修練施設
- 日本消化器病学会専門医制度認定施設
- 日本乳がん学会専門医制度認定施設
- 日本呼吸器外科学会専門医制度関連施設
- 日本臨床腫瘍学会認定研修施設
- 日本がん治療認定医機構認定研修施設
- 胃がん全国登録認定施設
- 日本食道学会全国登録認定施設
- 日本膵臓学会認定指導施設
- 日本大腸肛門病学会認定施設
医師一覧
副院長 / 部長中西 正芳(なかにし まさよし)
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乳腺外科部長山口 正秀(やまぐち まさひで)
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呼吸器外科部長和泉 宏幸(いずみ ひろゆき)
資格 |
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化学療法部長伊藤 忠雄(いとう ただお)
資格 |
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消化器外科部長石井 博道(いしい ひろみち)
資格 |
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副部長竹下 宏樹(たけした ひろき)
資格 |
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医長岡島 航(おかじま わたる)
資格 |
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医長吉岡 綾奈(よしおか あやな)
資格 |
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医長松井 智也(まつい ともや)
資格 |
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専門領域 |
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専攻医谷口 由実(たにぐち ゆみ)
専門領域 |
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診療実績
2023年度
- 外来患者数
- 24人/日
- 外来紹介件数
- 18件/月
- 入院患者数
- 15.8人/日
- 平均在院日数
- 10.4日
手術実績
- 胃がん
- 30(ロボット17・腹腔鏡7・開腹6)件
- 大腸がん
- 69(ロボット33・腹腔鏡33・開腹3)件
- 肝臓がん
- 11件
- 膵臓がん
- 5件
- 胆道がん
- 11件
- 胆石症
- 64(腹腔鏡62)件
- 虫垂炎
- 30件(腹腔鏡25)件
- ヘルニア
- 85(腹腔鏡52)件